Bellair SX-301
2026年 05月 30日
おつかれさまです。今日は社外品のメインテナンス。何度か辞退させて頂いたのですが、どこも診てくれない、せめて現状把握だけでも...ということで持ち込まれたBellair SX-301。オールWestern仕様です。恐らく90年代前半の品物でしょう。
オークションで購入されたということですが、購入価格はかなりの高額。記憶が定かではないのですが、販売当時)の価格はペア150万円くらいしたと思います。
当時国内ではベルエアさんのほか、カンノや新藤のアンプなどもあり、趣味性の高い製品が群雄割拠した良い時代でした。個人規模のブランドでもビジネスが出来た健全な市場環境だったと言えるかもしれません。

当時国内ではベルエアさんのほか、カンノや新藤のアンプなどもあり、趣味性の高い製品が群雄割拠した良い時代でした。個人規模のブランドでもビジネスが出来た健全な市場環境だったと言えるかもしれません。
お申し出内容は、片側からノイズ。もう片側はバイアス調整用のメーターが死んでいる、その他は不明というもの。回路図がないアンプを修理するのは地図なく目的地へ行けというのと同じ。決して容易なことではありません。結果責任を負えないことを理解いただき作業開始です。
まず裏蓋を開けて目で配線を追いつつ、回路図を頭の中でリライトすることから始めます。

310A三結二段, CR結合+グリッドチョーク, 出力段直流点火の固定バイアス回路であることが分かりました。シャーシのシルク印刷には整流管は274B / 5U4Gと書かれていますが、実機は274A。ただしコンデンサーインプット容量が大きめで274Aにはやや厳しい値ですが、幸い全体的にパーツレベルの大きな劣化は起こっていません。
通電して何かあるいけないので、まずは真空管単体の試験をします。310Aの一本が棄却値ギリギリであるのと300B一本の挙動がやや不安定。274Aは劣化兆候はあるものの何とか使えそうです。
製造されて30数年経過しているアンプの通電時に先ず行うのは接点の洗浄。ソケット, 可変抵抗まわりを内部洗浄して接触不良による連鎖故障は絶対に避けなければなりません。
いよいよ通電開始。私の後ろでお客さんが息を殺して見守っておられるので、此方も自ずと緊張感が高まります。万一の際には即電源を落とせるようにしつつ電源ON。慎重に電圧をチェックしつつ状況を確認していきます。
ラッキーだったのはお申し出のノイズが通電時点で消失していたこと。下手すると電源部のリビルドが必要かもと思っていましたが、恐らく経年による酸化被膜がソケットに出来ていたのでしょう。プレート電圧330V, グリッドバイアス-66V, プレート電流60mA, ゲイン28dB / 8Ω, 周波数特性 17Hz~26kHz / 1W / 8Ω, 残留ノイズ1.7mV / 8Ω, 出力9W / THD10%と測定結果も合格です。
モノアンプの場合は、もう一台との平衡度が大変気になります。以前ドイツ在住のヴァイオリニストの方からQUAD IIのオーバーホールをお預かりした際には、左右個体のロット (世代)が違い、回路定数も異なっていたことがあって往生しましたが、今回のようなC to C経由のアンプでは不正改造やデタラメ修理がされているのが一番心配です。
二台を比較したところ、いずれも電源平滑部の電解コンデンサーが交換されていること、そして二台目の300B周りで修復痕があることが分かりましたが、幸い定数は左右とも同じなので設変はされていないようです。
ただ二台目のWestern 300B (97年)はプレート電流がほとんど流れず電圧的にも異常であったため、スペアでお持ちいただいた2024年ロットの復刻Western 300Bに差し替えたところ、一台目とほぼ同じ電圧が確認できました。310Aの順列組合せを調整し、一台目も同ロットの300Bに替えて再調整を実施したところ、2台ともほぼ完璧にバランスした特性が得られました。バイアスメーターもアルコール洗浄で見事復活です。
お客さんに逐一測定器の挙動を説明しながら調整を重ね、全ての作業が終わったところでお客さんからひとこと”最高です”。私も事前段階では復旧は五分五分と思っていたので大きな達成感を感じることが出来ました。
正直いって大変と言えば大変でしたが、また一つ貴重な経験と勉強をさせて頂いたな、という気持ちです。ともあれ安心して使えるようになって本当に良かったなあと思っています。
まず裏蓋を開けて目で配線を追いつつ、回路図を頭の中でリライトすることから始めます。

通電して何かあるいけないので、まずは真空管単体の試験をします。310Aの一本が棄却値ギリギリであるのと300B一本の挙動がやや不安定。274Aは劣化兆候はあるものの何とか使えそうです。
製造されて30数年経過しているアンプの通電時に先ず行うのは接点の洗浄。ソケット, 可変抵抗まわりを内部洗浄して接触不良による連鎖故障は絶対に避けなければなりません。
いよいよ通電開始。私の後ろでお客さんが息を殺して見守っておられるので、此方も自ずと緊張感が高まります。万一の際には即電源を落とせるようにしつつ電源ON。慎重に電圧をチェックしつつ状況を確認していきます。
ラッキーだったのはお申し出のノイズが通電時点で消失していたこと。下手すると電源部のリビルドが必要かもと思っていましたが、恐らく経年による酸化被膜がソケットに出来ていたのでしょう。プレート電圧330V, グリッドバイアス-66V, プレート電流60mA, ゲイン28dB / 8Ω, 周波数特性 17Hz~26kHz / 1W / 8Ω, 残留ノイズ1.7mV / 8Ω, 出力9W / THD10%と測定結果も合格です。
モノアンプの場合は、もう一台との平衡度が大変気になります。以前ドイツ在住のヴァイオリニストの方からQUAD IIのオーバーホールをお預かりした際には、左右個体のロット (世代)が違い、回路定数も異なっていたことがあって往生しましたが、今回のようなC to C経由のアンプでは不正改造やデタラメ修理がされているのが一番心配です。
二台を比較したところ、いずれも電源平滑部の電解コンデンサーが交換されていること、そして二台目の300B周りで修復痕があることが分かりましたが、幸い定数は左右とも同じなので設変はされていないようです。
ただ二台目のWestern 300B (97年)はプレート電流がほとんど流れず電圧的にも異常であったため、スペアでお持ちいただいた2024年ロットの復刻Western 300Bに差し替えたところ、一台目とほぼ同じ電圧が確認できました。310Aの順列組合せを調整し、一台目も同ロットの300Bに替えて再調整を実施したところ、2台ともほぼ完璧にバランスした特性が得られました。バイアスメーターもアルコール洗浄で見事復活です。
お客さんに逐一測定器の挙動を説明しながら調整を重ね、全ての作業が終わったところでお客さんからひとこと”最高です”。私も事前段階では復旧は五分五分と思っていたので大きな達成感を感じることが出来ました。
正直いって大変と言えば大変でしたが、また一つ貴重な経験と勉強をさせて頂いたな、という気持ちです。ともあれ安心して使えるようになって本当に良かったなあと思っています。
by audiokaleidoscope
| 2026-05-30 21:46
| オーディオ
