おつかれさまです。明日から通常稼働となるタイミングで今回のGWを振り返ってみると、事前の見込み以上に案件完了できて個人的にはたいへん満足です。とはいえ通常よりも納期をいただいている状況であることは変わりないので、一日も早く平常化に努めたいと思っています。
今日はアドバンスPRA-1 (プリアンプ)の後変事例についてレポートします。デフォルトのロシア球からTesla E88CC Red Top / Sword Symbolへのアップグレードを実施しました。


いまや皆さんにとって真空管の交換は日常茶飯事で何の抵抗もないと思いますが、差し替えにあたって注意が必要な真空管もあるということを理解する必要があります。今回のECC88系はその一つです。
ここで一つの図表を提示します。

真空管の三定数 (μ, gm, rp)という指標についてご存じの方も多いと思います。
μ:電圧増幅能力
gm:入力電圧→出力電流の変換効率
rp:内部抵抗といえる訳ですが、混同されがちなのがμとgmではないでしょうか。
μ(増幅率)→ 電圧増幅能力の指標(大きいほど増幅しやすい)
gm(相互コンダクタンス)→ 信号変換効率(大きいほどドライブ能力が高い)
上の図表で注目すべきは12AX7とECC88です。12AX7はμは高いがgmは低い→大きく増幅するがドライブ力は低い, ECC88はμは中程度だがgmが高い→負荷に対するドライブ力が高いといえます。
Gmが高いと小さなグリッド電圧変化によって大きなプレート電流変化が起きる訳で、PRA-1では真空管の個体差によって総合特性に影響を与えることから、選別はかなりシビアです。
仮に市場でペア選別済と謳われている真空管でも不見転で差し替えることで逆に特性が悪化しているパターンをたくさん見てきました。そのシビアさは実機での動作条件によっても変化しますので、設計的な理解なく安易な差し替えはリスクを伴うということも理解しておく必要があります。

時間はかかりましたがこのような結果となりました。入力386mV, 出力778mV=ゲイン約6dBと理論値通りで左右ゲイン差も0.1dB未満となりました。残留ノイズ的にも10kΩ負荷でL/Rとも0.05mVと超優秀です。
オーディオは感覚的なものですから聴いて良ければOK的な側面もありますが、背景に設計的な裏付けがあることも理解する必要があります。他方、静特性を突き詰めたからといって良い音になることもないところがオーディオの深く面白いところです。
皆さんが留意すべきは自分のアンプが正しく動作しているかどうかということ。車に車検があるように、アンプも数年に一度は健康診断する方がいいかもしれません。結果的に問題なしであったことを知るだけでも大きな意味があります。