今日は最古参のお客さんであり、長年の友人Kさんが試聴室にお別れを言いに来てくれました。Kさんは私と同世代で、会社が現住所に引っ越して来る前、親会社の体育館の一室で仕事していたころからのお付き合いですから25年以上のお友達といえるでしょうか。
過去は学会の帰路に寄ってくれることが多かったですが、今回は当地で行われたライブに二日連続で参戦し、その興奮冷めやらぬなかでの再会でした。
真空管アンプで聴く音楽ジャンルといっても実にさまざまです。ジャズやクラシックという方ばかりでなく、ロックやポップス, 演歌, 民族音楽, HIP HOPなどありとあらゆるジャンルがありますが、実はピュアオーディオユーザーにいわゆるアニソンファンがとても多いのをご存じでしょうか。
ハイレゾ音源のダウンロードが流行しはじめた2014年頃、販売サイトのトップ100の三割くらいがアニソンジャンルの曲で驚いたことがあります。ユーザーの世代が「ポストCD」つまり、CDプレーヤーを持たず物理メディアの呪縛から解放された人たちであったことも大きく関係しているかもしれませんが、アニソン曲を聴く人の年齢層が若年層だけでなく私世代にまで拡がっていることも大きな要因です。
当時はそれらの音楽を「二次元系」などと呼んだりもしたものですが、現在は更に進化し「2.5次元系」、つまりリアル × バーチャルのハイブリッドジャンルとして広く受け容れられています。今回Kさんが参戦されたライブも声優によるリアルアイドルユニットであったと伺い、試聴室で一緒に聴かせていただきました。

最初はサブスクで音だけ聴いていたのですが、このジャンルは視覚要素も大きいので動画配信サイトで音楽を ”視る”ことにしました。アニメ設定と声優パフォーマンスが相互に補完し合う世界ならではの楽しみ方ですね。

こんなものも見せて頂きました。会場でLEDを点灯させて振る ”ブレード”と呼ばれるグッズ。ライブ動画をみるとお客さんのほぼ全員が持っているんじゃないかと思うほどの必需品のようです。お気に入りのキャラクターのテーマカラーを点灯させて応援するんですね。
近年「推し活」ブームと言われます。応援する対象を「推し」と呼び、好きなスポーツ選手, 芸能人のような実在の人物だけが対象でなく、キャラクター, 作品自体を応援したりSNSでシェアしたりして楽しむ活動全般を指すと理解しますが、自分の好きな対象に前向きなエネルギーを注ぐ、共感できる存在が「心のよりどころ」になる幸せな営みだと思います。
いいオッサンが...などと言うこと勿れ。誰にでも大切な聖域があり、何人 (なんぴと)たりともその領域に土足で立ち入ることは許されません。推し活をする人が、対象と伴奏するような温かい気持ちで接している状況を、私もオーディオを通じて数えきれないほど体験させていただきました。
日本人はカテゴライズが好きとよく言われます。その昔、タンノイはクラシック, ALTECはジャズ...何となくそんな不文律が国内で浸透したとき、ある媒体でALTECの本国エンジニアが ”作る方は全くそんなことは考えていない、あくまで音楽を忠実に再現するだけだ”と言ったインタビュー記事を読んだことが記憶に残っています。真空管アンプもクラシック, ジャズ専門なんて決める必要は全くありません。
Kさんはもちろん真空管アンプファン。自宅では12インチのJBLシステムで聴いておられます。ライブ会場の雰囲気を思い出しながらスピーカーの前で再びブレードを振りながら音楽を楽しむ...実際そこまでしていないとは思いますが、とても楽しいひと時だろうなと想像します。そういうオーディオの楽しみ方に強く共感し、私も一緒に伴走していけたらと思っています。