オーディオ機器メインテナンスのPDCAサイクルで測定という行為は不可欠です。更に細分化していくと製品としての総合特性の確認だけでなくパーツ、とくに真空管, 電解コンデンサー等は単体レベルでの確認もしておく必要があります。
最近その真空管試験機の調子がイマイチだなあと感じておりました。幸いバックアップ用に別の試験機を入手できたので業務的に問題となってはいなかったのですが、慣れといいますか、自分にしっくり来る肌感覚と言いますか、長年つかってきた相棒のオーバーホールが必要だと感じていました。

KS-15750-L1です。Wstern ElectricがHickok社に外注したチューブチェッカーですが、最近右上のGmメーターが不調でした。メーター自体の問題なのか、接点不良なのか、あるいは別の原因なのか...どうせやるなら校正作業までキッチリやって測定の信頼性も向上させておきたいものです。

なかを開けてみました。もう見ただけでクラクラしそうな超高密度&高層配線です。

メインテナンスで里帰りしているSV-310。上と見比べるとちょっとホッとしますね。

英文のサービスマニュアルと格闘しながら、まずは全接点をアルコール洗浄していきます。分解清掃すると間違いなく元に戻せなくなるので、ノズルでそれぞれの接点にアクセスしながらアルコール吹き付けとコンプレッサーによる高圧乾燥を繰り返して接点をきれいにしていきます。

そのあと確認したのが電源系です。KS-15750には低圧系で5Y3, 高圧系で80 二本の整流管が使用されています。今回C電源系 (バイアス)の可変機能は生きているので5Y3はたぶんOK。仮に80がエミ減でB電源系がヘタっていたと仮定すればGmメーターの動きがイメージよりも低い理由となり得ます。

これが代替で用意したマツダ80。80は1927年にRCAが開発した直熱整流管で、家庭用ラジオが電池から交流電源化が始まった時期に誕生し、その後の電気製品の電源部を支える主要パーツとして世界中に普及しました。欧州では同等管UX-280が知られています。

こんな感じで二本並んでいるので80だけ差換えていきます。
80を替えても駄目な場合、国内で修理できる業者さんの当てがないので、eBayで不動品を買ってメーターだけ替えるとかしないといけません。頼む...コイツが原因であってくれ!と思いながらリプレイスして通電してみます。

一次側電圧をピッタリ合わせて、300Bがチェックできるか確認してみます。

心配しながらチェックボタンを押してみると今まで動きが悪かったGmメーターが勢いよく動きました。やはり80の経年劣化が原因だったようです。自分で対処できるレベルの問題で助かりました。

300Bの基準値2900に対して3000が観測できてOK。これで明日からの作業がスピードアップ出来そうです。やはり定量的, 客観的に数字で事象を把握できると安心ですね。