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セカンドオピニオン

今日は会社行事のあと現場に戻って作業再開。少し気になった案件を共有させて頂きます。

皆さんも中古ショップ等でオーディオ機器を購入されたことがあると思います。購入の際、誰もが気になるのは製品の状態です。新品でない以上、何らかの劣化が生じている可能性があっても、購入店の知見と経験において不具合ポイントが修正されていることが前提で購入に至るというのが通常です。

ただ修正の結果としてどういう改善が得られたかまで開示しているお店は少ないかもしれません。昨日の認定中古をゲット下さったお客さんが、サンバレーさんは購入前に測定結果を見られるので安心感が違うと仰って下さったのは大変嬉しいことでした。

話を戻します。或るプリアンプに関して問題がありました。当社から出た製品が巡り巡ってある中古屋さんに入荷し、それを購入されたお客さんから、どうも左右バランスがおかしい (気がする)が、購入店で検査してもらったが異常なしで戻ってきた...しかしパワーアンプを替えてもケーブルを替えても状況が変わらず、店に相談しても全く取り合ってもらえないので、いちど診てもらえないだろうか、というご相談でした。経緯はともあれ自社製品に関してのご相談ですので、お預かりして確認してみました。

その結果は以下のミリバルの写真を見て頂ければ明白です。Lchの出力がRch (基準レベル)に対して約2.3dB低いことが分かります。
セカンドオピニオン_b0350085_21160859.jpg
2.3dBということは電圧比で約1.3倍ですので無視できるものではありません。一般的には1.5dB以上のゲイン差があると明らかに定位が崩れますから、この状態ではファントムセンターが出ずステレオイメージが崩れた状態になっていた筈です。

つまりお客さんの指摘は正しく、購入店の異常なしという所見とは明らかな齟齬があります。失礼かとは思いましたが先方に連絡して状況を伺ってみました。その結果、オシロで確認したがレベル差はなかった、聴感上も特に変とは感じなかったとのことでした。

そこで測定条件を伺ってみたところプリの出力を直接オシロに入力しているとのこと。それで一連の齟齬の理由が分かりました。測定時の負荷インピーダンスが適切でなかったのです。

プリはパワーアンプに接続されることで機能を果たします。ということはパワーアンプ (負荷)が接続された状態で初めて実際のパフォーマンスが発揮されることになります。その負荷インピーダンスは真空管パワーで50kΩ~100kΩ, 半導体パワーで10kΩ~50kΩ程度が標準的です。

ここで思い出していただきたいのが ”ロー出しハイ受け”の原則です。下のエントリーをご記憶でしょうか?

文中に負荷インピーダンスによる測定差異について触れています。ここでお伝えしたかったのは負荷インピーダンスが変わることでアンプの挙動は全く別のものとなるという事実です。もう少し言えば負荷側のインピーダンスが高くなるほどプリから見た負荷は軽くなり、見かけ上の測定結果が良くなります。これが最大のトラップという訳です。

私どもではプリを測定する際の負荷インピーダンスは基本10kΩとしています。言い換えればプリにとって最も厳しい条件で測定して合否判断をしている訳です。今回のケースではオシロに直接つないでいる、イコール負荷インピーダンス=1MΩと非常に高い値になっています。このためプリの悪さが検出できなかったという手順の不適切さによってお客さんの申し出が購入店に通じなかったという訳です。

今日の冒頭のミリバルの2.3dBの差異は10kΩ負荷時の結果ですが、試しにこのプリを1MΩ負荷で通電してみました。すると...
セカンドオピニオン_b0350085_21160831.jpg
明示的なレベル差は現れません。人間で言えば横になって安静時に血圧を測っても異常なくても、日常生活では不調を感じるという感じに似ているのかもしれません。

結果的にこのプリには実際に不具合がありました。Lchのパスコンがイモハンダで電気的に外れていた結果、電流帰還がかかってゲインが下がっていました。つまり本来は測定によって検出され適切に対処すべき事象が、不適切な測定条件によって見逃されてしまう可能性が実際にあり得るということです。

もちろん今回のお店の方が悪意であったということでなく、単に方策が適切でなかったということで、今後は10kΩ負荷で測定しますと言って下さいましたので、今後の再発は無い筈です。

セカンドオピニオンは通常受ける側にフィードバックされますが、実施側で共有することも大きな意味があることを改めて認識した今回の案件でした。


by audiokaleidoscope | 2026-01-25 23:59 | オーディオ

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