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文殊の智慧

今日はオーディオにおける思い込みのトラップについてレポートします。

今日の午後、あるお客さんのお宅へ伺ってきました。昨年オーディオのレイアウト変更してからずっとアナログの音が変で、何ヶ月間に亘って何度再調整しても直らない...こんなご相談をいただいていました。

これまでフォノEQを持ち込んでいただいて再測定しても異常なし、代わりのアームをお貸しして付け替えていただいても変わらない, 基本的な調整はすべて完璧にやっている...何をやっても光明が見えないということでしたので、機器チェックを含めてお邪魔してきたという訳です。
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SV-310EQ / Western Electric 310A仕様 + SV-310 / Western Electric 310A仕様

まずは現状把握をしっかりしなくてはいけません。LPをかけていただくと非常に歪っぽくとても聴いていられません。聴感的には過大入力時の歪みに似ています。

念のため持ち込んだ別のSV-310EQでも状況は同じ。CDは非常によい音で鳴っているので、消去法的に犯人はフォノEQより上流、つまりターンテーブルであることは間違いありません。

念のため別のカートリッジ (DL-103)に付け替えていただいても状況が変わらないので、ターンテーブル自体を替えてみることにしました。私が比較確認用に持ち込んだ別のターンテーブルを仮設置しプレイバックしてみると...問題なく鳴るではありませんか。いよいよターゲットが絞り込まれてきました。

ターンテーブルを元に戻して今度は私の方で調整をさせていただきます。針圧計をお借りしてアジャストしようと思った瞬間、あれ?と思いましたが、まさかと思いながらSPUの適正針圧3.5gに調整させていただいて再生してみます。

...すると今までの異常音が嘘のように解消されています。この段階で先ほどのあれ?が確信に変わりました。原因は針圧計だったのです。
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現在もっとも普及しているタイプの針圧計です。表示窓の下に三つボタンがあり、中央が電源, 右がリセット, 左が単位切替です。

あらためて画像をごらんください。針圧調整は当然g (グラム)単位で行われるべきところ、お客さんの針圧計は何らかのタイミングで左のボタンを触ってしまわれて単位がOz (オンス)に変わってしまっていました。お客さんはそこを気づかず何ヶ月間もの間、知らずにオンス単位で針圧調整を行ってこられた結果、酷い歪み音に悩まされてきたという訳です。

ちなみに1Oz=約28gです。ということはいままでSPUに100gの針圧がかかっていたという訳で、逆に言えばそれでもスタイラスは壊れないということに驚きました。改めて今日再調整が完了し、素晴らしい音でレコードが聴けるようになってお客さんも私も大満足。もっと早くお伺いすればよかったと申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

これに似た経験は以前に一度だけしたことがあります。購入したフォノEQの音が変だとお客さんから猛烈なクレームが入り、飛んで行って状況を確認したらフォノEQの出力がプリメインアンプのフォノ入力に接続されていたというオチでした。フォノEQがダブルで効いて普通に鳴る訳がない...当たり前のようなお話ですが、お客さんは言われて初めて気づいたと頭を掻いておられました。

私もそうですが、一旦こうだと思い込むと冷静な判断ができなくなって迷路を彷徨ってしまうことがよくあります。そんな時は誰かの力を借りて別の目線で確認すると即解決なんてことも。こういうことを文殊の智慧というのかもしれませんね。


by audiokaleidoscope | 2026-01-08 20:57 | オーディオ

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