今日は修理案件。平時は作業を職人さんにお任せし私は最終検査を行っているのですが、そうも言っていられない状況なので加勢させて頂いています。
まずはSV-275 (KT88pp)から。

某ラウンジで使って頂いてきたSV-275。調べたら2008年にわたしが組んだ個体でした。

SV-275回路図
”ラストメッセージ SUNVALLEY audio主要アンプ回路図 30選” より転載
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今回ドックインしたのは ”通電中に焦げ臭い匂いがして電源が入らなくなった”というお申し出から。恐らくG-Kが原因だろうと想像していました。G-Kについては下記エントリーを参照して下さい。
底板を外して中を診てみます。

真空管の劣化が惹起した故障である点は共通ですが、今回はKT88の一本のスクリーングリッドが焼損, カソードバイパスコンデンサーがドライアップしている状況でした。カソード抵抗 (10W620Ω)にダメージはありません。
このパターンは他社アンプでも時々見かけますが、高周波発振でスクリーングリッドに異常電流が流れたのが原因でしょう。長時間通電により劣化し寄生容量が増加した結果、KT88が不安定となり発振したと考えられます。
こういう場合はダメージを受けたCRパーツKT88は問答無用で交換です。とはいえKT88は4本全部替える必要はなく暴走した一本だけ替えてみて様子をみます。

今回替えたのはRchアッパー側。右から2本目です。写真は交換後4時間通電した時のアイドリング電流の状況ですが、他の3本を含め60mA ±5%以内で収まっており、矩形波応答も良好なので多分これでOKでしょう。このまま丸一日通電しっ放しで問題なければ完了とします。
つづいてはSV-300LBです。

SV-300LB (300Bトランス出力プリアンプ) ※写真はホームページから転載
今日手直しした個体は今月の認定中古で出品予定でバリバリの新古品です。カップリングはArizonaに交換されていました。ちょっとこの写真を見て下さい。


もともと組立代行品なので非常によく出来ています。注目いただきたいのはArizona。さて何が要対処項目でしょうか?
結論から言うと、交換されたArizonaのハンダづけや極性に問題があるのではなく、特に下側の0.22uFのリード線が近接していて何らかの事由で重量のあるArizonaが動いた時に短絡する可能性があるという点が懸念事項です。以前輸出用機台を空輸で送った時、多分ダンボールごとブン投げられてリード線が接触するどころかカップリング本体が離断してシャーシ内に転がっていたこともありました。大型パーツは要注意です。
この手の大型オイルコンは物理的サイズからリードも長くなりがちで、アンプ実装状態は基板からブランコのようにぶら下がったような状態となっている場合があります。なるべくリードが冗長にならないようにするのが一番ですが、今回は接触防止の意味でガラスチューブでリードを絶縁することとします。

これが
ガラスチューブ。エンパイアチューブ (ワニステトロンチューブ)でも構いませんし、手許にない場合は余った配線材から芯線を抜いてシースだけ活用しても良いと思います。今回は1φを使いましたが、各種太さがありますので適宜用意しておくと万全です。
今回は接触の懸念がある内側の4本だけを保護することとしました。スルーホールを抜かないよう注意しながらハンダを外し基板の毛穴が見えるまでハンダを吸い取ってからリードにガラスチューブを被せて再ハンダします。

これが対処後、たったこれだけですが、製品トータルの信頼性は大きく向上します。皆さんが家で使うだけでしたら必須とまでは申しませんが、何かの拍子にここがショートしたら...と思うと心配ですので、適材適所で使っていただくと良いというお話でした。