オーディオ機器は音を聴くためのもの。改めて言うまでもないことですが、一方で真空管アンプはその存在感も魅力のひとつです。
とりわけ真空管アンプはヒーターの仄かな灯り, 出力管内に浮かぶグロー...それらはあたかもキャンプにおける焚火のように中心的なアイコンかもしれません。

長時間露光で撮影したSV-91B / Western Electric 300B 仕様
今日は管内にオーロラのように浮かぶグロー(放電)について改めて考えてみます。
言うまでもなくグローは真空管が動作した結果発生する副次的なもので、それ自体が性能評価の対象ではありません。例えば同じ300Bで同等のEp-Ip特性を有していてもグローの出方には個体差があり、それ自体に大きな意味はありませんが、見た目が気になるという方もおいでになるのも理解できます。
そもそもグロー放電 (Glow Discharge)とは、低圧の気体中で電圧を印加したときに発生する放電現象で、原理的には真空管内に存在する僅かな自由電子が電圧が印加されること加速され、管内に僅かに存在する気体分子や原子が電子衝突によって電離 (イオン化)を起こしたものと説明することが出来ます。
つまりグロー放電は電子衝突により原子,分子の励起 (電子が分子や原子の外殻電子を高いエネルギー準位に移動)が発生し基底状態への遷移によって光放出というプロセスで生じるもので、簡単に言えば電場で加速された電子が発光したものがグローです。
グローの出方の差異に関する説明としては
・電極表面の状態
電極の材質や表面の粗さ、酸化膜の有無によって電子放出特性が変化。同じ300Bでもブランドやフィラメントの材質, 製法により差異が発生。
・管内ガスの種類と純度
真空管内に僅かに残留するガスの微妙な差異により発光色や輝度が変化。
・電極間距離と電場分布
電極の位置関係わずかな違いで電場の分布が変化することで個体差が発生。電場が強い個体では電子が加速が促進され衝突電離が活発になった結果、局所的な明度の差異が発生。
・真空度の僅かなばらつき
真空管製造時の排気精度によって残留ガス圧により差異が発生。圧力が高めだと衝突頻度が増えてグローが広範囲に発生する傾向あり。なお継続通電によってゲッターが残留ガスを吸着し経時的にグローが減少する場合もある。
・電流・電圧条件
同電圧が印加されても電極の状態やガス組成の違いで電流値が変化し、発光強度に差が発生。
要約すると個体差の主な原因は①電極表面状態, ②残留ガスの量, ③電場分布の微妙な差異によって発生し、製造工程や使用環境のわずかな差により生じるため均一なグローを得ることは困難といえます。
見た目も重要ですが、それ以上に電気的な性能に注目してお使いいただくことが大切ですね。
