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整流管のインラッシュ対策

月末期限の案件も明日の納品でコンプリート。今週はかなり厳しかったですがなんとか乗り切ることが出来そうです。

今日の作業の締めは先日の認定中古で出品させていただいたSV-A2。カートリッジが決まり、取り付けた状態での追い込みです。毎回思うことですがターンテーブルの追い込みは本当にデリケート。ベースの水平出しから始まってアームの高さ, オーバーハング, ラテラルバランス, インサイドフォース...さまざまな調整と確認を行う必要があります。針圧だけ合っていればOKという訳にはなかなかいきません。

今回アーム1にMC, アーム2にMMを装着することが決まり、上記の物理調整を行ったうえで何枚かLPをかけていきます。ターンテーブルの出力をオシレーターの代わりに測定系に繋いでみると、本当にちょっとしたことでL/Rのバランスが1dB以上変化するので、出来るだけ細かく追い込んで送り出すことにしました。
整流管のインラッシュ対策_b0350085_03284372.jpg
最終的にはお客さんの環境できちんと設置いただくことが必要とはなりますが、水平が出て針圧がOKであれば十分な再現性が得られると思います。半日以上かかりましたが納得のいく調整が出来て良かったです。

ところで昨日の続き。テーマとしては整流管を替えたらFUSEが切れる(ことがある)場合の対処方法です。現行の真空管製造技術はずいぶんと進化して中国, ロシア, 東欧の区別なく、90年代初めに生産が急激に増えた頃とは品質レベルも相当進化しています。

特に民生用真空管における製造品質のバラツキはかなり小さくなっており、現地工場も頑張っていることを感じさせますが、一部電圧増幅管におけるヒーターのDCR偏差によるスタートアップタイムの個体差と整流管の内部抵抗管理に関しては、まだ全盛期のレベルに達していないといえるかもしれません。前者は通電後、一定の時間が経てば平衡動作に至るので問題ないといえますが、後者においては何らかの対策が必要となる場合があります。

誤解を避けるために申し上げておきますが、現在現行整流管で何ら問題なく使えている場合は今回の対策は不要です。事例としてSV-S1616D / 300B仕様で説明していきますが、製品版では正式採用されていません。対症療法的あるいは予防保全的に追加したところ効果がありましたので、皆さんに共有させていただくものです。

SV-S1616D / 300B仕様で5AR4を使用した場合、定常的な消費電流は一次側100.0Vで1.36A~1.43A程度 (個体差により変動)です。対して標準FUSEは5Aですので問題はないのですが、整流管は電源ON後ヒーターが点灯しカソードが立ち上がった後に過渡的な突入電流 (インラッシュ)が発生します。通常このインラッシュはピークで3A程度ですが、現行整流管では瞬間的に非常に大きなインラッシュが流れるものがあり、結果としてFUSEが切れてアンプが護られるという事例が起こる場合があるのです。また整流管の劣化によって管内がスパークし過大な突入が発生することもよく知られています。

整流管が新品でこのようなFUSE切れが発生する場合の対処としては、いちばん簡単なのはFUSEをスローブロータイプに替えるという方法です。通常は即断型(ファーストブロー)を使いますが、スローブロー(遅延動作型)に替えることで瞬間的な過電流 (突入電流)には耐えられるようになります。整流管アンプなど起動時に大電流が流れる機器に適しています。

もう一つはアンプ側で対策することで、電流制限抵抗を追加する方法です。SV-S1616D / 300B仕様で実体図に落とし込んでみたのが下の図です。
整流管のインラッシュ対策_b0350085_03284282.jpg
電源トランスのB巻線と5AR4の4番, 6番 (プレート)間に100Ω 3Wを挿入するイメージです。この抵抗がインラッシュのブレーキとして動作し、過大な突入電流を抑止することが出来ます。アンプの音質や総合特性に影響を与えるものではありませんので追試の有効性は高いと思います。あとは日常的な作法としてホットスイッチングを避けることも大切ですね。

もし皆さんが、今後このような事例に遭遇した時はお試し下さい。昨日も書きましたが他のメーカーさんでも困っておられるようで、修理で戻ってくるとダイオードモジュールに替えて返送せざるを得ないというお話を伺っていますが、今回の対処でクリアできると思いますので、頭の片隅にでも留め置いていただければ幸いです。


by audiokaleidoscope | 2025-11-27 12:59 | オーディオ

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