今日は溜まっている出荷検査をしようと物流センターへ行って段取りをしていたら電話が。
出てみると”中古でSV-91B完成品を購入したのですが、真空管アンプに詳しくないので、有償でいいから検査して欲しい”というリクエストでした。もちろん大丈夫ですよ、ご予約はいつにしましょうか?と申し上げると、いまショールームの前にいるとのこと。このパターンなかなか無くなりません。
ご近所の方であればリスケをお願いするところですが、伺うと他県からいらっしゃったということでしたので、物流センターの住所をお知らせして持ってきていただくことにしました。
そして持ち込んでいただいた91Bがこれ、なかなかの美品です。

伺うと半年ほど前にショップ経由で入手されたということで、履歴を調べると2023年に認定中古 (PSVANE WE仕様)で販売した個体であることが分かりました。お客さんはかなり高価なプライスで購入されたようです。
購入した状態で2年ほど使ってきたが、最近歪っぽく感じるようになり、購入店に相談したら保証期間が満了しているのでメーカーに訊けと言われた由。
早速通電してみると1W以下でこの波形。両チャンネルとも波形が近似していることから、恐らく電源部に何らかの問題があると思われます。

パッとみて真空管が変わっていることは分かっていましたが、購入時の説明では”真空管は前オーナーにより、すべてヴィンテージ品に交換済”ということでした。

初段はWestern Electric 310Aの
リプリント品のFake。元はRussia 10Ж12Cです。ドライブはLM310Aでした。

300B, 整流管はすべてメーカーロゴが消されています。ヴィンテージという触れ込みでしたが、PSVANE 300B (WEではない), PSVANE 5U4G (いずれも現行品)。

見る人は見れば、マイカ板の形状の違いからこれがWesternあるいはPSVANE WEでないことは直ぐ分かります(WesternもPSVANE WEもマイカ板はおむすび型)。
こういう真空管を”消し球(だま)”と呼ぶことがあり、手の込んだ業者は消し球にリプリントして再販することが普通なので、恐らくこれはカッターナイブでロゴを削って出自を曖昧にしようとした意図を感じます。
整流管を換えてみると二次側電流が適正値に戻り、出力も9V (約10W)まで回復することから、歪みの原因は整流管の劣化であることが分かりました。アンプ本体は改変されておらず、修理も不要であることが分かったので代金は不要ですと申し上げたところ、全ての真空管を新品に替えたいので改めて相談に乗って欲しいと仰って一旦お帰りになりました。
今回のケースは恐らく再販されたお店も真空管アンプの知識が希薄で、音が出たからOK程度の認識だった可能性もあります。残念な事例でしたが、こういうこともあるというレポートでした。