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proving a negative (ないことの証明)

今日は一台のアンプとずっと対峙中。かれこれ24時間連続通電しています。
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これは海外版SV-EQ1616D / 230V仕様。2年ほど前に出荷したロットの一台でしょうか。

里帰りの理由は、通電して1時間から3時間経過するとRchの音が途切れる、というもの。こんな時は検査する意味があることを事前確認いただく為に、タマを左右入れ替えて変化があるかとか、入出力ケーブルを左右入れ替えた時に変化があるか等、常道的なQ&Aを経て、問題の原因が機台側にあると推定される場合に関しては、実機を送って頂いて再検査をし、万一何か不具合あれば対処するという流れになります。
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これが機台内部。カップリングコンデンサーがV Capに替わっているのと、信号系抵抗が金属皮膜に替わっている以外は国内仕様と同じです。

私どもでは職人さんの自主検査, 別の外注さんによる二次チェック+測定, そして社内の出荷検査という3重の関所を設けていますので、組立代行品の品質不良は極めてレアケースです。上の写真でも実は何十か所かに”ここはチェック済ですよ”というマーキングがされていて、言われないと気付かないと思いますが、今回のような出戻りが起こった場合にとても役立ちます。

ある程度予想されてことではあるものの、今回は改めて当社基準で検査しても異常は検出されていません。輸出バージョンは真空管は添付されず、送っていただいた真空管はお客さん所有のものですが、これも正常でした。

実はこの”異常が出ない”というのは最も対処が難しいのです。”異常が出ない”のと”異常がない”のは厳密には同じではないからです。

「存在しないことを証明する」という事は非常に困難あるいは不可能で、16世紀から17世紀の欧州で行われたとされる魔女狩りの際に、”魔女でないことを証明せよ”と言われても出来っこなくて多くの女性が拷問され処刑されたのも、この ”ないことの証明” (proving a negative)という誤謬を逆手にとったと言われています。

私もそうですが、人間というのは一旦思い込むと、その呪縛から逃れることは困難です。事実、”真空管不良だ”といって交換依頼をいただく事例でも多くの場合、真の原因は他にあったりします。本当は前置機器が原因だったり、ケーブルが原因だったり、単なる接触不良だったり、キットの組立上の原因だったとしても、そう思い込んでしまうと、その仮説に添った事実だけを積みあげてしまうのかもしれませんね。

こういう場合は、愚直に長い時間をかけて問題がないという事実を現象面から積み重ねていくしかありません。場合によって数百時間の累積通電を行い、”やっぱり異常なしです”、と返送すると、”直ってました”なんていうことも往々にしてあります。

私の立場としてはお客さんが困っておられるという事実に寄り添いつつ、当社の仕事が間違っていなかった場合には、それをファクトとして伝える責務があります。今回のような善意の相談の場合は特にそうですが、稀にある”金の斧, 銀の斧”事案の場合は、しっかりしたエビデンスを示して毅然と対応することも大切な役目。こうやって半月あるいは一ヶ月かけて品質の再確認するのも製造者の一つのミッションです。


by audiokaleidoscope | 2025-10-25 23:59 | オーディオ

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