組立代行品や認定中古品などで最早ふつうに行っている後変(あとへん)。お客さん指定の仕様に一台一台カスタマイズするのは、自分だけの一台を仕上げるための共同作業的な感じで、自分も好きな作業の一つです。
後変は真空管とカップリングコンデンサーの変更が大半で、再測定とエージングの時間は必要ですが、作業自体はそれほど大変ということはありません。今日はレアケースで機構系に関わる後変依頼がありましたので、その事例紹介をさせていただきます。

これはSV-Pre1616Dの組立代行品で、定番のカップリングASC化のほか、よく写真を見てみただくとヴォリュームが変わっていることがお分かり頂けると思います。
今回はヴォリュームの16型から27型への変更依頼ですが、物理的サイズも異なりますし、シャーシ加工も必要となりますので組立後に別種のものと交換するのは、入力系の事前分解も必要でシャーシ加工後の金属粉の除去などノウハウに関わる部分もあって慣れと工夫が必要かもしれません。
作業中にゾーンに入ってしまい、写真があまり撮れていませんが...

まず入力系を取り外し解線してシャーシ加工から始めます。ALPSのRK27はオリジナルの16型とは穴径も違いますし、シャフトの長さ自体も異なるのでリーマーでシャーシ加工をして金ノコでシャフトを切る予備加工も必要です。ヴォリューム自体の回り止めの位置も違うので、ヤスリで削る必要もあり、アマチュアの方はこの段階で断念されてしまうかもしれませんね。

これが作業後の写真ですが、ギリギリ入ったという感じで、一部ラグ板周りのパーツレイアウトも変更しています。ちなみに16型の名誉にかけて申し上げておきますと、私どもの場合は調達時点で全数選別を行い、ギャングエラーの大きいヴォリュームはその時点で廃棄、さらに測定時の検査で常用摺動角で0.7dB以上のギャングエラーが検出される場合は出荷停止となります(一般的には時計の9時位置で1.5dB未満が合否判定の閾値)。
今回は物理的, 特性的向上よりもお客さんの気持ちの面での満足を重視して対処させて頂いた事例紹介でした。これで心置きなく楽しんで頂けると思うと頑張った甲斐もあったと思いますし、作業させていただいた立場でも機台に対する愛着も増したような気がします。
その昔、技術職の社員から恨めしそうに言われたことがあります。”言うのは一秒でも、やるのは一日かかる”...今回の機構系後変もその一つと言えるかもしれませんが、やって良かったと思っています。