”その後”から学ぶ
2025年 10月 09日

このSV-275は拝見したところ、かなり経験のある方が組まれたものであるものと思われ、ドライブ段のEL84が一本劣化していた他は電気的には問題ありませんでした。出力管はJJ KT88です。JJはやや出力が下がる傾向があるものの、この機台では36W/ch出ており問題はありません。
各KT88のアイドリング電流も60mA強で一致しており矩形波の応答も安定しています。周波数特性的にも10Hz(-1dB)~100kHz(-0.5dB)と優秀で、35dB以上のハイゲインでありながら残留ノイズは1mV以下です。通常であれば若干の手直しで再出品が可能なレベルの作品です。
しかしSV-275を既にお持ちの方が上の写真をよくご覧になるとあることに気づかれるかもしれません。実は電圧増幅段真空管の配列が当社標準と異なっているのです。通常は左から12AX7, EL84, EL84 / 12AX7, EL84, EL84となっているのですが、この個体に関してはオリジナルユーザーさんの拘りでシンメトリ(左右対称)、つまり中央に12AX7が二本あり、ドライブ段EL84が左右に展開されています。最初何も考えずに通常どおり真空管を挿して片ch信号が通らないので、アレ?と思いよくよく見たらそのように改変されていることに気が付きました。

もう一台査定させていただいたこの1628Dもキット製作品でした。カップリングコンデンサーはJENSEN銅箔にアップグレードされており、845と211 二種類の出力管が付属していますので、再販時も両方の音を楽しんで頂こうと思っています。これは組立マニュアル通りに製作されていることが確認出来ましたので、買取させて頂ければ遅くとも来月にはご案内できると思います。
日々、様々な状態の製品を対面することで、私どもから出荷させていただいた製品の”その後”を知ることが出来ます。フルオリジナルを金科玉条とされる方、キットを素材と捉えて存分にオリジナリティを発揮される方、それぞれのお客さんの考え方やプロセスが私どもの大きな糧と知識や糧となっていることは間違いありません。
お客さんの智慧と共に私どもの経験の蓄積を今後の修理やオーバーホールにしっかりフィードバックしていきたいと考えているところです。
