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製造終了後のニューバージョン

今日はちょっと珍しい事例紹介です。
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ご存じSV-mini91B。メインテナンスが終わって銘板を貼ったら完了という状態まできたところを撮影しました。セカンドユーザー品で入力ヴォリュームが左右独立となっており、電圧増幅段のバイアスが深く改造されているほかはオリジナル回路通りで、電圧増幅段6C6仕様で入荷したものです。

お客さんのリクエストは全体点検 + 電圧増幅段PSVANE WE310A, 出力段PSVANE WE300B仕様化、プリはSV-310を使うのでヴォリュームはバイパス希望というものでした。頂戴したメールから現状でも特にご不満なくお使い頂けている様子でしたので、修理というよりもバージョンアップ案件として取り組ませていただくこととしました。

このmini91Bはいまから15年強前、当時話題となっていた佐久間式アンプにインスパイアされて企画したものです。全段トランス結合、つまり入力トランス, インターステージトランス、出力トランスを装備しているところが最大の特徴で、橋本電気に相談し、試作を重ねて量産に漕ぎつけたものです。

実際に佐久間アンプを入手し、測定したところ16Ω負荷で高域側の周波数特性10.5kHz(-3dB)というナローレンジながら12インチのフルレンジで鳴らした時の雰囲気の良さに感銘を受け、データよりも耳で聴いた時の心地よさに挑戦してみようと思ったのが量産に踏み切ったきっかけでしたが、一方で現代スピーカーではもう少し帯域を拡げたいという想いもありました。

実際にお客さんからもそういう要望をいただくことがあり、個別的に対応した事例を通じノウハウの蓄積も出来てきたことを踏まえ、近年の認定中古等での再出品ではニューバージョンとして設変した仕様に変更させていただいてきました。具体的には入力トランス温存, 初段五結化, インターステージバイパスを骨子としたもので、もちろん製品開発当時の佐久間式アンプへのリスペクトは失っておりません。

その仕様変更による変化を具体的にまとめたのが下図です。
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ゲイン9dBアップということは全体の利得が2.8倍に上がったことを示しており、反応の良さと聴感上のキレの向上に寄与しています。出力に大きな差異はありませんが、注目いただくべきは周波数特性で、低域側も高域側も伸びていることがデータ的にも明らかですが聴感上の変化はそれ以上です。

一般的に測定上の周波数特性をよく見せたい場合は帰還(NF)量を深くするのが常道ですが、SV-mini91Bはオリジナルも対策後も無帰還で、安易にNFに頼った仕様変更でないことは仕上がりゲインが大幅に上がっていることからもご理解頂けるかと思います。
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これが対策完了後の実機内部。上で述べたように局所的な設変ですので、シャーシ内部の景色はオリジナルと大きな違いはありません。入力トランスを温存したこともあり、入力トランス付アンプならではのコクは対策後も色濃く残っています。

こんな風に製造終了後も回路や音質について考える機会をいただけるのも、日頃のメインテナンスや中古品の再整備などで自社製品の”その後”に対面できる機会が多いお陰です。

売って終わりでなく、買っていただいてからが始まる事を大切にしてきましたが、これからもmini91Bと同じように別の製品で”製造終了後のニューバージョン”が登場することがある、かもしれません。どんな、いつの製品であっても絶えず音質向上を狙っていきたいと考えています。
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by audiokaleidoscope | 2025-09-29 23:59 | オーディオ

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