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Western Electric 284Dの誘惑

完成品でなく組立代行という言葉を使うのには幾つかの意味があります。その一つにセミオーダーメイド、つまり松竹梅を含め、お客さんの指定仕様で一台一台作り上げるという私どもの特殊性があると思います。在庫にない真空管を取り寄せたり、時にはお客さん支給の真空管を使ったりと普通メーカーがやらない小回りを利かせたモノづくりが私どもの強みの一つと言えるかもしれません。

今回いただいたオファは過去27年間の私どもの歴史の中でも屈指の内容といえるかもしれません。SV-300LB + SV-284DバランスドシングルMONO × 2台の組立代行依頼案件ですが、なんと845の代わりにWestern Electric 284Dを使って欲しいという内容です。
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写真が支給いただいたWestern Electric 284D。必要数は4本ですが最適なペアを2組抽出するために支給いただいた6本です。国内でWE284Dをこれだけの数お持ちの方は非常に限られているでしょう。レアとか高価という表現だけでは語れない、先人が遺した文化遺産の一つのような存在だと思います。
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Western Electric 284Dは1935年~1948年まで製造され、知られるところではWE87A, WE99Aに搭載されました。
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Western Electric 87A : photo by courtesy of westernelectric.com

さてSV-284DにWestern Electric 284Dを搭載する際の注意事項としては845のプレート損失100Wに対して284Dのそれが85Wと15%低いことに注意が必要です。

SV-284Dの設計値はプレート電圧: 930V, カソードバイアス電圧: 95Vですので実プレート損失は約80Wとなります。計算上このままでも284Dを挿しても問題ないといえますが、貴重なWesten Electric 284Dを定格ギリギリで使うのはやや抵抗があります。そこで特注仕様としてバイアスを若干深めにしてプレート電流を抑えることとし、音質を犠牲にせずに出力管の負荷を軽減することとしました。もちろんこのままで通常の845も使えますので、最大出力が若干下がる以外の背反事項はありません。

今回のように製造されて80年~90年経過している真空管は、過去どのような使われ方をしてきたか全く分かりませんので注意が必要です。特にトリタン球はオキサイドコーティングフィラメント球よりも寿命が短めで、フィラメントのDCRもバラツキも大きい傾向があります。

また寝かした状態で長期保管されているとフィラメントが撓んでトラブルになるケースもあり、一瞬にしてお釈迦というパターンもあります。ペア50万~100万近い貴重球ですので、念には念を入れてフィラメント7V, プレート電圧700Vくらいから徐々に電圧を上げていって万全を期していきたいと思います。

こういう特殊なパターンはお客さんと受け側である私どもの間に強い信頼関係があることが大前提です。その期待にお応えできるよう、私どもの集大成の一つとして真剣に取り組んでいけたらと考えています。


by audiokaleidoscope | 2025-07-06 23:59 | オーディオ

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