アンプのDF(ダンピングファクター)と低域再生について
2025年 06月 06日

よくオーディオ同好会や仲間うちで自分のアンプの鳴き比べ的なイベントが行われますが、買ってから”そうだったかのか~...”では遅い。ですから結果の如何を問わず、その機会を購入以前に提供するのもメーカーの一つの責務と考えます。この試聴室が閉鎖されるその日まで、この場所をそういう風に活用頂きたいと思っています。
お客さんの300BシングルとSV-91Bの外見上の違いは電圧増幅段310Aが一段か二段かの違いだけ。しかし測定してみると両者の違いは明白です。

特に注目すべきポイントを塗ってみました。この差を主に構成しているのはNFBのかけ方の違いです。いちばん差が出るのは周波数特性ですが、実は測定差として現れる高域特性以上に低域の質感の違いが最大のポイントになります。いかに測定値と聴感が一致しないかの典型例といえるかもしれません。
では自分のスピーカーにどちらが向いているのか、これは聴く方の嗜好もあると思うので一概に言えることではありませんが、最大公約数的にいえばALTEC 515系あるいは416系のようにフィクストエッジ(fixed edge)あるいはフリーエッジ(free edge)で無理にF₀(最低共振周波数)を下げていないタイプではダンピングファクターをあまり稼いでいないアンプの方が低域の量感が得られる場合があります。
ちなみにオリジナルWestern Electric 91Bでは約20dBの帰還がかかっていますが、シアターと家庭用という用途の違いがありますので、一概にNFBありが良いということはありませんし、310A一段無帰還300Bシングルは本家Western91型をベースとして家庭用にリファインした日本オリジンの回路形式といえそうです。
いずれにして回路的には共通部分が多い両者ですが、音質的には明らかな差がありました。これこそが真空管アンプの多彩な表現の面白さです。当社にはあらゆる形式の真空管アンプが常備されていますので、ぜひその差をご自身の耳で体感いただきたいと思います。