久しぶりの道場破り
2025年 05月 27日
目的はご愛用のフォノEQ内蔵プリを持ち込まれての一騎打ち(比較試聴)です。ヒトもモノもそうですが、減点法的”検事の目(耳)”で対峙していても相手の本質(持ち味)が活かされることはありません。如何に良いところを見つけて引き出してあげるかという”弁護士の目(耳)”を持つことが大切です。

いずれもMCポジションあり(昇圧トランス内蔵)なので、今日のカートリッジはDL-103R proにしました。何度も書きますがフォノEQはMCポジションで通常約60dB(1000倍)のゲインがありますから、回路形式や使用デバイスによっても全く違った音の景色が現れます。今日はまさにそんなひと時でした。
持ち込まれたプリはフォノ段6AQ8 / ECC85のLCR型, フラットアンプは6H6n(Russia)単段という構成。対してSV-396EQはCR型イコライザーでECC83 + 5670WA / 2C51カソフォロですので設計の考え方自体が異なります。優劣で比較するのではなく、どちらが自分の目指す表現かという視点で楽しめば良いのがオーディオの素敵なところですが、オーディオの個性は斯くも多様か!と思わず唸らせる差異がそこにはありました。
アナログレコードを聴く動機はさまざまです。雰囲気で楽しむか、デジタル以上のリアリズムと情報量を狙うのか...私どもで言えばEQ1616Dも396EQも310EQも溝に刻まれた情報を余すところなく引き出すことを最大の眼目としてきました。一方で今日聴かせていただいたようなゆったりとふくよかな音もまたアナログの大きな悦楽であると思います。
よく”音は人なり”と言いますが、同じLPがフォノEQによってこれだけ出音が違うことを体験して非常に有意義な時間でした。これからお客さんが二種類のフォノEQ体験をご自身のリスニングルームでできるようになれば、更に音楽を豊かに楽しめるようになることでしょう。