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性能と価値のシーソーゲーム

中古の準備がひと段落して、今日は夜っぴいて(って今あんまり言わないですね)matantz 7Tと対話中。
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管球式の7Cに対してトランジスターの7Tは格下的に見られがちですが、現代のモノづくりが忘れてしまった当時の叡智が詰まった逸品であり、タイムカプセルのような存在です。
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シグナルパスを最短化する意図で巧みに検討されたパーツレイアウトは秀逸。かの岩崎千明さんをして「私は経済的なゆとりがあるのならマランツ7Tこそもっとも買得のプリアンプであることを疑わない」と言わしめた名機です。

ただいくら名機であったとしても、どうしても年月の経過とともに訪れる劣化に抗えないのが道理。見た目は概ね問題なさそうでも、当時の7に普通に見られるRCA入出力端子のベーク部分が崩れてグズグズになっていたり、コンデンサーの絶縁不良, 容量抜けは当たり前, 接点系の酸化被膜によってガリやノイズも随所に見られます。

ここで問題となるのが”どこまでやるか”問題。電気的に完全修復を目指せば数十(以上)のパーツ交換が必須であり、RCA端子はほぼ全交換、コンデンサーも大半入替となるでしょう。但しそれではもうmarantz 7とは言えない何かを後世に遺すことにもなりかねません。

この”修理難民”をどう救済するか、いちばん間違いのはもう一台手に入れて良い所どりをしてニコイチ化することですが、それには莫大な費用がかかります。修理にもいろいろな考え方や手法がありますが、”なんでも現行パーツに替えてしまえ”は避けたいところです。実際そういう個体も世の中には沢山存在します。

性能と価値のシーソーゲームは使う側にとっても直す側にとっても永遠の課題。考えなければならないのは当時のメーカー技術者だったらどうするか...そんなことを思いつつ、時間だけが過ぎていきます。

これが自社製品だったら原状復帰(元の状態に戻す)ことを最優先に考えるのが創った側の基本スタンスですが、製造が終わって数十年経った製品の修復は様々な葛藤と究極の二者択一を迫られます。悩ましいところです。



by audiokaleidoscope | 2025-04-18 23:59 | オーディオ

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