修理報告書公開
2025年 04月 07日

外観チェック, シャーシ内目視点検の結果、信号が通りそうな感じでしたので、とりあえず積もっていた埃を飛ばして通電してみます。まず一次側電圧70Vくらいから始め、少しづつ100Vに上げていくのですが、途中が電流がバーンと振り切れる場合は何らかの不具合がある証拠。この人(人じゃなかったですね)は問題なくてまずはひと安心。
ただ細かく見ていくと当然ながら対処すべき課題が検出されます。まず211/845切替のロッカーSWが壊れていて211側に倒れない状況が確認できたので、旧製品の部品棚から交換用ストックを探してきて交換しました。
SW系に限らず、この10年でパーツ廃番が相次ぎ、ストックがないと対処の手立てなし、という懸念が急速に高まっています。大型コンデンサー, 開閉器(SW), 半固定抵抗(VR) etc...これらを如何に保持できるかが提供側に問われるようになってきました。大手メーカーの場合は”製造終了後8年経ってパーツは残っていませんので修理不可です”で済むかもしれませんが、私どものような直販の場合はドライに切り捨てられないケースも多く、いちばん難儀する部分です。
この個体はその他、入力ヴォリュームにガリが見られたほか、ドライブ段KT88の一本のガイドピンが折れてシャーシの中に転がっていましたが、その他は概ね良好。

この個体では問題なかったのですが、送信管アンプをお持ちの方でご自身で点検される場合、上の写真の赤矢印部分のビスが緩んでいるのを見落としがちです。ここは211/845のバヨネットピンをロックするソケット枠部分を固定するためのビスなのですが、出力管交換を繰り返しているとどうしても緩んでくるのです。
今回は電気的故障個所や回路系で交換が必要と思われるパーツがない軽微な事例でした。たぶん多くのメーカーが修理報告書を出すと思いますが、私どもでは概要, 測定, 写真で構成されたシンプルな報告書を添えて実機をお返ししています。今回の報告書(個人情報, 金額明細は消去)をお見せしましょう。
SV-2 ver.2003_報告書20250407
続いては2007年納品のmodel2。これもオーバーホールご希望でしたが、真空管含めほぼパーフェクトコンディションで左右ゲインもバッチリ。周波数特性も歪も全てOKで、機構系再締結とターミナル / 接点系のクリーニングくらいしかやることがない上物でした。


振り返ってみると2006~2007年頃は、いわゆる”団塊の世代”と呼ばれる先輩たちが還暦を迎えられようとした時期で、退職後のお楽しみのためにどんどん注文が入り、本当に忙しかったことを覚えています。あの頃、日々親しくお話した先輩たちももうじき傘寿をお迎えになると思うと感慨もひとしおです。
自分もいま、あの頃のお客さんの年齢になって色々と考えることも多い訳ですが、縁あってこうして機器をお預かりさせていただき、メンテを通じて日々懐かしい方々と連絡を取り合えるのが、なによりの歓びです。これからも安心して末永くお使いいただければ幸いです。