切られた桜
2025年 04月 02日

真空管には様々な動作上の条件(ルール)があります。ヒーター電圧, ヒーター電流はその基本の最たるものですが、その他にも周辺抵抗値だったり、整流管ではコンデンサーインプット容量等の遵守すべき規格というものが存在します。
具体的な言及は避けますが、このPre1616Dに搭載されていた増幅管はヒーター電流がオーバーロード, 整流管については動作上は問題なかったものの、想定している供給電圧から乖離が見られました。
依頼主さんに電話して状況を説明すると、知り合いから譲り受けたもので、その辺りの事情は全く分かっていなかったということでした。幸い標準球もダイオードモジュールもお持ちということでしたので、本体の点検(機構系, 接点系中心)の確認を行い、当社基準球で測定を行ったうえでお返しすることにさせて頂きました。
先日こんなこともありました。某社のKT88プッシュプルにKT120を挿して電源トランスを焼いてしまったアンプの修理依頼案件です。KT88=6.3V/1.6AですがKT120=6.3V/2Aです。これを僅か一本0.4Aの差として放置するか、四本1.6Aの差と考えて回避するかはユーザーさんに委ねられています。S1616D, P1616Dなど2Aヒーターのビーム管に対応しているアンプ以外では、メーカーに仕様を確認せずに使うことは避けるべきでしょう。残念ながらお預かりしたアンプは直ることなくお客さんに返させていただくこととなってしまったのは何とも残念なことでした。


この企業にとっては不要で無意味なものになったかもしれませんが、日本人の心の拠りどころの一つを誰の目にも明らかな形で切り捨てた判断に対し、本当に他の選択肢はなかったのかと感じています。これが暫定的な措置で、いつかまたあの美しい風景が戻ってくる日がきっと来る、そう信じたいと思います。