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入荷チェックとエージング

今日は入荷品の確認をさせていただいています。90%以上が自社製品ですが、時々入ってくる他社さんの製品を診させていただくことで、それぞれの製品の特長や拘りが見えてきて、それが何よりの学びにつながります。
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これは何の変哲もない密閉2ウェイに見えますが、日本のオーディオの歴史に欠かせないVictor SX3を手掛けられた方がKripton(クリプトン)に移籍して手掛けたKX-3 Vigoreというバージョンです。SX3から一貫したクルトミューラー製コーン, 密閉構造, アルニコマグネットの系譜が引き継がれている名機です。

このモデルがデビューした直後のショーで聴かせて頂いたとき”なんと精緻な音場だろう”と感激したことを忘れませんが、今日改めて聴いてみると淀みなくキレの良いウーハーも然ることながら、ソフトドームツィーター帯域の艶っぽさが際立つ音であることを再認識しました。現行KX-3 SXでも基本設計自体は大きく変化していないことから、いかにこのKX-3シリーズが当初から完成度の高いモデルであったことを窺わせます。

8時間ほど鳴らし込んで、ウーハーの動きもだいぶ良くなってきましたので、このまま試聴しつつ総合性能を確認していきます。買う側は売る側の感性と技術も含めて購入される訳ですから、私どもは皆さんの目と耳に成り代わってチェックしなくてはなりません。

続いてはトライオードさんのヒットモデルTRV-A88SE(固定バイアスKT88シングル)。新品同様の外観で前ユーザーさんのお人柄まで伝わってくるようです。入荷前のコメントで通電中に異音がして云々...ということでしたので早速チェックしてみましょう。
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パッと見、そんなにダメージを受けているようには見えませんでしたが...
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よく観察するとRch KT88のカソード抵抗が変色していますね。これは典型的なG-K状況ですが、幸い問題発生後にすぐ電源を落としていただいたことによってコンデンサーの明示的な膨満は確認できませんでした。

このケースの対処方法としてはまずKT88を二本とカソード抵抗を交換して様子を見るというのがセオリーですが、恐らく問題なく復活できるでしょう。

G-Kは基本的に熱膨張によって管内電極が短絡した結果カソード抵抗にダメージが及ぶことが多いですが、スクリーングリッド抵抗が焼損しているパターンも散見されます。この場合は発振等の不安定動作が遠因となっている場合もあるので、設計的視点での確認も必要となります。

続いてはここ何回か瞬間蒸発が続いているSV-192S。発売開始から17年も経つのに、未だにこれだけ引き合いがあるというのは本当に有難いことだと思っています。今日の個体はDSDオプション付のフル装備品です。

基本製造を他社さんにお願いしている製品の場合は、コストが掛かってもメーカーオーバーホールをお願いしていますが、一次チェックは必ず行います。その結果デジタル系はOKだったものの、前ユーザーさんが交換されたと思われる12AU7のGmに差があり、左右chに看過できないゲイン差が確認できたので、Mullard M8136 / ECC82に交換しました。
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基準信号を入力してオシロとミリバルでゲインを完璧にそろえることが出来ました。Monitor出力のヴォリュームは当初からお使いになっておられなかったようですのでアルコール洗浄して完全な状態に回復しました。
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内部はフルオリジナル状態をキープしています。一般的に改造品はメンテお断りというのがメーカーポリシーで、実際192Sでも買取が成立したあとにメーカーOHを断られたことも何度かあります。改造車を直すディ―ラーがないのと同じですね。

このM8136は新品ですのでしっかりした鳴らし込みが必要ですが、数時間鳴らすだけで鳴りが大きく変わってきます。毎回思うことですが電気的なだけでなく音色的にも仕上げて次の方にバトンを渡すのも私どもの重要なミッションの一つです。


by audiokaleidoscope | 2025-03-28 23:59 | オーディオ

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