購入してから10年, 15年と経てばどんなものでも劣化するのが道理。一方で基本的な部分がしっかりしているモノは然るべき対処をすれば性能を維持できるのも事実です。
今日は先週お預かりして買取が成立したmiddy(10インチ同軸2Wayバスレフスピーカー)の全体整備プロセスの一部をご紹介します。

整備完了したmiddy。2010年頃から受注生産したもので、兄貴である
MIDはサイズ的に無理というお客さん向けにご用意したものでユニット, ネットワークは共通です。Tannoy Stirlingの大きさをイメージいただくとサイズ感が分かると思います。
会社へ持ち帰られていただいて外観は大変きれいだったので期待して検品に入ったところ、大きな問題がみつかりました。

片chのユニットに致命的な劣化が発生しています。振動板の変色の状態から恐らく乾燥と湿潤の反復が大きい空間(寝室など)で西日が当たったことによってエッジのビスコロイド系ダンプ剤が乾燥して硬化した末の破断と思われます。修理する方法もありますが、原設計のピストンモーションが復元することはありませんので、対策としてはユニット交換しかありません。
元々MID / middyはTannoy Monitor Gold IIILZかHPD295を支給頂ける方向けの特注品として試行的に受注開始し、その後ユニット自体も復刻(
Sunvalley 10inch Coaxial)した経緯があります。いろいろと思案した結果、外観に劣化が少なくオリジナルユーザーさんがとても大切にして下さっていたことも含め、ストックしていた最後の1ペアを代替として使うことにしました。


画像を拡大いただくと分かりますが、オリジナルMonitor Gold IIILZを分解して図面と型を起こし、アルニコIIIマグネットを使って作り上げた10inch Coaxial。自分でもよくぞ作れたものだと思います。

新品をマウントして生まれ変わったmiddy。エッジもしっとりしていて柔らかく良い感じです。これから数十時間100Hzの正弦波でユニットを慣らせば完璧でしょう。その他端子等も研磨してピカピカに仕上げたいと思っています。
今回リビルドを実施して改めて思ったのはエンクロージャーが実に正確に作られていて、全くといっていいほど劣化していなかったこと。木材は湿度変化を含めた経年により必ず ”動く”(変形)するものですが、ユニットや裏板の脱着時に1mmもずれていないことに驚きました。
安曇野の家具職人さんが当時”Tannoyよりも良い材料を使ってるからね”と言っていたのが15年経って証明されたといえるかもしれません。300Bシングルあたりでゆったり鳴らしてあげて欲しいと思います。売主さんもきっと喜んで下さるでしょう。