別れ

その瞬間は突然にやってきました。

30数年間、家を空けていない日は使わないことがない位、自分の一部とも言ってもいいオシロが一瞬で事切れました。電源は入っているのに波形が見られないことから恐らくCRT(ブラウン管)が寿命を迎えたということなのでしょう。
”買い替えれば済む話ではないか”と言われそうですが、そんな簡単な話ではありません。いまの仕事を始める前からずっと一緒に暮らしてきた、いわば相棒のような存在です。オシロはアンプの心電図のような存在。単なる道具でなく、これまで私どもから生まれたアンプは全てこのオシロに繋がれてきた、自分の歴史の一端でもありました。

モノも人も失ってその価値を識る、というのは本当です。先日も、そして今日も買取査定のためお預かりした品物が自分の部屋から無くなって、その喪失感に耐えられないから返して欲しいという要望がありました。年齢上, 健康上, 環境上その他の理由から一旦は手放すことを決めた筈なのに、無くなって如何に自分にとって大切であったことに気づく人は多いかもしれません。

私の自宅にも沢山の機器があります。いずれは誰かの手に渡ることでしょう。その日は一日でも遠い先であって欲しいとは思いますが、自分は死んでからでは遅い。元気なうちにこの人なら...と自分が安心して託せる方に預けたいと思います。
その日まで、大切に使ってあげる...それが別れの日までの、使う側の責任といえるかもしれません。