今日もさまざまな品物が入荷し、作業を終えた品物が出荷されていきます。それぞれにモノとヒトの歴史が詰まっているように感じます。

これは某社のカセットデッキ。今回が五回目のメインテナンスと思われます。通常他社製品は辞退対象ですが、今回は馴染みのお客さんからの依頼でお預かりしたものの、これまで二社当たって修理不可ということで伝手(つて)を辿って改めて別の業者さんに託したところです。無事直りますように!

これはSV-91B(前期)のメンテ依頼品。履歴を追えませんでしたが恐らく2004~6年頃の当社組立代行品と思われます。年式を考えると極めて良好な個体です。

初段NE 337A, JAN CW 337A, PSVANE WE300B, Mullard GZ37 / CV378というラインナップ。

NE 337Aは馴染みが薄いかもしれませんがTung Sol製のUSA品。内部構造がWesternとよく似ていることから”
転がし球”として流通しているのを時々見かけます。ちなみに337Aは主にRF帯(高周波)用途のバリμ管ですが、オーディオ用として310A同等(僅かにμが低め)として使用可能です。
黄色のWestern Electricのゴム印は後から押されたもので、
この写真を見ると元々ベース部にあった削られたロゴの一部(TとUの左半分)の痕跡を認めることができます。NE 337Aの名誉にかけて言えば電気的品質はWesternに劣るということはありません。今回お預かりした2本も健全でした。

今回入荷した不具合はブリッジダイオードの劣化によるA電源(ヒーター系)の電圧低下が原因でした。お客さんのリクエストでカップリングをArizonaにアップグレードしていきます。

参考までに申し上げておきますとGZ37は91Bの標準球である274Bとの互換性はありませんので注意が必要ですが、センタータップでヒーター容量と電源部の電解コンデンサー耐圧に余裕があることから91Bでは使用が可能です。傍熱管であることから整流出力電圧が高く、出力は標準値を上回った11W / ch出ています。全体点検を終え、新品同様に生まれ変わりました。
この91Bが複数のユーザーを経て今回のお客さんの手に渡った経緯は分かりませんが、20年ぶりに私どもに一時帰郷したのも何かの縁。どのような形であれ可能な限り完全な形でお返しすることに変わりありません。