先月ブログでSV-8800SEのKT88仕様で音質向上のためのノウハウ云々と書いたところ、多数のお問い合わせを頂戴しました。その後、機会を待っていたのですが今日SV-8800SEの出荷検査がありましたので、その実例を紹介をしたいと思います。

SV-8800SE / Gold Lion KT88仕様のメインテナンス完了品。残すはバイアス調整と測定のみです。
改めて復習しておきますと真空管アンプには出力管のプレート電流を半自動で行う「自己バイアス」とユーザー自身で調整を行う「固定バイアス」に大別されます。それぞれにメリットがありますが、例えていえば前者はオートマ, 後者はマニュアルのようなものと考えるといいかもしれません。
参考まで過去のエントリーを再掲しておきます。
固定バイアスアンプには必ずメーカー推奨値が存在します。例えていえばタコメーターにレッドゾーンが切られているのと同じで基本”これ以上電流を流さないでという警告値と考えるのが妥当ですが、その値は或るアローワンス(余裕)を含んでいる場合が多いのも事実です。安全値を公示することでトラブルを未然に防ぐための方策ですね。
SV-8800SEに話を戻します。マニュアルを見ると推奨調整値は1.0Vとされていますが、実は限界値は1.35V程度です。もう少し正確に説明しますと、電源電圧が上昇したり出力管が不安定でプレート電流が暴走する等の場合にアイドリング電流が1.35Vを一定時間超えた状態が継続すると電源トランス内の温度FUSEがブローして事故を回避する設計になっています。
調整値をアイドリング電流に読み替えると調整値1V=Ip約45mA, 1.35V=Ip約60mAとなります。調整値が0.3V違うだけでプレートに流れる電流が20%も変わる訳です。当然音質も大きく変化します。ターボチャージャーの過給圧を20%上げた時のフィールの違いのようなものですね。
皆さんがSV-8800SEをお使いでKT88が安定していて暴走の懸念なければ最大1.2V程度まで上げても問題はありません。今後も推奨値1Vを変える予定はありませんが、このブログを読んで下さっている方は一定の経験と知識をお持ちと思いますので1.1V~1.2Vに再調整して音質の変化を確認してみて下さい。
以下、一次側電圧100.0Vに安定化した状態での調整状況です。テスターの電圧は実機固有の値であって真空管, 環境によって必ず変化しますので参考値としてご覧ください。

アイドリング電流50mA時のバイアス調整値1.15V強

アイドリング電流55mA時のバイアス調整値1.25V強

アイドリング電流60mA時のバイアス調整値1.3V強(限界値)
敢えてギリギリの状況の写真もアップしましたが、皆さんは1.2V程度を目安として”いかなる場合においても1.35Vを超えないこと”を遵守して下さい。電源トランス交換は大きな出費となりますので、ご注意頂きつつお楽しみ頂きたいと思います。