今日はSV-284D / PSVANE WE845仕様(組立代行品)の出荷点検から。1920年代後期の
Western Electric 43aを現代に復刻するイメージで企画したこのアンプには格別の思い入れがあります。

仮にこの製品が終売になった後に、この形式のアンプが再び世に出ることはないのではないか...製品を送り出す度に思うことです。

この個体は組立途上の品物を私どもでお預かりして仕上げるというやや特殊なケースでした。云わば合作のようなものですね。バトンを受け取って再びお返しする、そんな感じでしょうか。大切に使っていただければ幸いです。
そして次に着手したのはSV-275(KT88pp)。カルテを確認すると2004年にお納めした個体です。幸いアンプ本体に目立った傷みはなく、予防保全的な対策を中心としたオーバーホールとなりました。

真空管もすべて交換せずにお返しできるのは珍しいケースです。車でも5年でガタが来るものもあれば30年以上経っても現役バリバリというケースもあります。要は日ごろの向き合い方と定期的なメインテナンスで天と地ほどの差が出るということですね。

配線の硬化もケミコンの膨満や塩吹きもありません。記憶が定かではありませんが、その昔、McIntoshアンプの技術解説文書で”シャーシ内温度が10℃上昇すると電解コンデンサーの寿命は1/2になる”という記述を見た気がします。現代機器のような高密度配線でなく、真空管機器は余裕のあるパーツレイアウトがし易く、修理(パーツ交換)が容易というのは大きなメリットであることを改めて感じました。
…こんな感じで今日もぶじ終了。そして帰宅して聴いているのがこのLP。80年代後半バンドブームの真っ只中にいた世代にとっては超胸熱、NOKKOさんのRebeccaセルフカバー盤です。


ダンサブルなクラブ / エレクトロニカ的テイストのなかにもMONOならではのエネルギーの密集感がオーディオ的快楽に溢れています。ジャケットも最高です。
ときどき良い音でこういう音源を聴いていると、なんだかこの感動に自分も与(くみ)しているような錯覚に囚われます。オーディオはともすると”音源至上主義”に陥りがちですが、鳴らす側である私たちの主体性と環境(装置)の意味を改めて感じたひと時でもありました。