今日はトライオードVP-mini88MkII(キット組立品)を診させて頂きました。製造番号から2008年のロット。カルテを確認すると前回2018年にメンテナンスさせて頂いた個体であることが分かりました。
聞けばヘアサロンのBGM用。週5日一日8時間、前回修理から6年間ですから単純計算で約12000時間強の使用ということになります。状況的には最近スピーカーからガサガサ音がするようになったということで、おそらく真空管の劣化ではないかと思いつつ中を見てみます。

miniMkIIで多いのはKT88カソード抵抗あるいはスクリーングリッド抵抗が過電流で炭化しているケース。多くはKT88のG-K由来ですが、この個体は目視上の変化はなく、配線の変色や硬化も見られません。前回の修理レポート記載の状態から本体に大きな変化はなく良好です。
スピーカーに繋いでみるとお客さん申し出の散発的なノイズが再現しました。試しに真空管単独のGmを測定してみると通常新品で得られる値の60~70%程度まで下がっていることが判明し、アンプにそのまま戻してバイアス調整値を確認するとメーカー指定値の約半分まで下がっています。
つまりタイヤでいえばスローパンクチャー。毎日お使いいただくなかで少しずつ劣化していていったもので、よくぞ今日までパンクせずに持ち堪えたものだと誉めてあげたくなるような状態でした。
よく”整流管3000時間, 出力管5000時間, 電圧増幅管10000時間”なんて言いますが、前回メンテ時に店舗利用という事でバイアス調整電圧を少し低めにしておいたことが良かったのかもしれません。いままでの皆勤に感謝しつつ全ての真空管をリフレッシュしてあげることにしました。
12AX7(2本), KT88(2本)ともJJに替えて、同時に入力セレクターを無水アルコールでクリーニング。ヴォリュームにガリは出ていませんが予防保全的に洗浄して、入出力ターミナルの研磨と再締結をしてから測定...認定中古品同様のお手当をして作業完了となりました。

JJ KT88にはクリア(透明)だけでなくRedとBlueもラインナップされています。当社ではクリアを調達しているのですが、ときどきBlueが混じってくることもあります。だいぶ感じが違いますね。
作業自体はこれでお終いですが、実はこれからが本番。今後も10000時間安全運行してくれるように、長い時間をかけてエージングし、安心してお使い頂ける状態でお返ししたいと思っています。これからも頑張って活躍して欲しいものです。