今日、お客さんから電話で訊かれました。”気のせいかもしれませんが、ボンネットを外した時の方が音が良い気がするんですが…”。さて皆さんはどう思われるでしょうか。
これは簡単に片づけられる問題でなく安全面も含め検討すべきテーマです。だいぶ前のことになりますが。PSE法が施行される前、国内真空管アンプメーカー間で”ボンネットどうする?”問題が活発に議論されたことがありました。真空管は熱源として使用者から隔離されるべきものか、白熱球の亜種として見るかで大きく結論が変わってきます。例えば白熱電球に全てカバーが必須だとしたら、照明メーカーさんは大変だったことでしょう。
法的解釈としてマイナーの極である真空管アンプへの見方は当時から定まっていたとはいえず、事実当時公的機関に問い合わせても窓口や担当者さんによって解釈は様々でした。あれから20年弱たった今、ボンネットなしの製品もあればメーカーによっては必須というところもあって、各社の判断に委ねられているようです。
…と脱線してしまいましたが、真空管アンプのボンネットやターンテーブルのダストカバーを音楽演奏中に外すかどうかについて明確に言及するメーカーはありませんが、筐体振動(モード)の側面から言えば、”使用時は外す”が正解というのが当社の見解です(ただしSN面からはボンネットありの方が一般に有利です)。
ターンテーブルのダストカバーを演奏中に被せることが間違っているとは思いませんが、何となくヌケが悪い、こもった感じの音がする、変な付帯音が乗る…と感じるのは正しい印象だと感じます。真空管アンプの場合も同様でガラスの厚みですら音色に影響を与えると言われるほど繊細な存在であることからも、ボンネットを被せて使用することで音が変化することは容易に想像できます。
またまた脱線しますが、以前国内の半導体アンプメーカーのデモルームで旗艦アンプの上蓋が全て外されているのを見たことがあります。そもそも脱着式でなく”開けるな危険”と書かれているシャーシを敢えてオープンにして聴いていることに対して質問したところ、ひとこと”音です”と答えておられました。お客さんには勧められないけど音質的には無い方が…というのが本音だったのでしょう。


SV-2(2007)のように全面ボンネットタイプのアンプをお持ちの方は試しに外して聴いてみて下さい。あるいは音場が広がって聴感上の伸びやかさも増して聴こえるかもしれません。
もちろん火傷や増してや感電があってはいけませんし、小さいお子さんがおられる環境やペットと同居されている皆さんにとってボンネットほど有難いものはありません。今後も安全面,SN面からボンネットの有用性が損なわれることは決してありませんが、なぜボンネットやダストカバーが脱着式になっているかということを改めて考えていただくのも、オーディオの使いこなしの深みの一つと言えるかもしれませんね。
(補足)
ボンネットには真空管の保護という目的のほかにノイズシールドとしての役目を担っています。フォノイコライザーや初段トップグリッド球を採用したパワーアンプ等で、メーカーがボンネット仕様を推奨する場合あるいはボンネットが脱着式になっていない場合はボンネットありを標準仕様としてお使いいただくことが基本となります。