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Western Electric 262Bの修復

年内に予定していた組立代行品, メインテナンス関係の納品が今日でひと区切りついて、細々した作業の残りをやっていきます。

そんななか、今日は真空管の修復もやったので写真を撮りました。管内の真空度が損なわれている場合は無理ですが、その他のケースは何とかなる場合が結構あります。なかにはこんなケースこんな惨状も。いずれも修復できました。

今回はトップグリッド球あるある。310Aや6C6などを使っておられる方で”私もやりました(涙)”という方も多いのではないでしょうか。管頂のグリッド電極の離断です。
Western Electric 262Bの修復_b0350085_00260666.jpg
これは超貴重品のWestern Electric 262B。1938年から製造された262Aの改良型で製造数が少なく入手も困難。電気的性能をクリアしているものは一本600USドル以上とも言われているレア球です。

グリッド離断の最大の原因は取扱上の問題で、碍子製のグリッドキャップが被った状態で横方向の応力を加えることで発生することが殆どです。特に旧い真空管は接着剤が経年で痩せていますので簡単にポロっととれてしまうんですね。”わ、やっちまった!”と思っても後の祭り。泣く泣く買い直したという方も多いのではないでしょうか。でも条件さえクリアすれば案外簡単に修復が可能です。
Western Electric 262Bの修復_b0350085_00260531.jpg
これが離断した電極部。上部にハンダが盛られていますので、まずこれを除去していきます。
Western Electric 262Bの修復_b0350085_00260563.jpg
そうするとこんな感じで中央部の穴が開いていることが分かります。
Western Electric 262Bの修復_b0350085_00260490.jpg
本番前に再実装可能か確認。仮に被せてみます。262B本体から出ているグリッド線が外れたキャップの穴から見える状態であれば修復可能です。
Western Electric 262Bの修復_b0350085_00260440.jpg
ここからが少々大変です。外れたキャップの内側に速乾性の二液性エポキシの接着剤を適宜塗布し、乾き切る前に再装着してハンダを完了する必要があります。瞬間接着剤では必ずまた外れますので使えません。再ハンダしたあと研磨して導通確認出来れば完了です。接着剤が固まってしまうとやり直しが利きませんので失敗しないように!
Western Electric 262Bの修復_b0350085_00260583.jpg
…ということで無事、物理的修復が完了しました。大切なのはここからで電気的にどうかという事です…が残念な結果になりました。

プレート電圧 120V
グリッドバイアス -6V
プレート電流 1mA
プレート負荷抵抗 26.6kΩ

という条件下での標準値がGm 570μmhosであるところ、今回修復した262Bとペアで購入されたもう一本とも基準値の半分(以下)のGmしかありませんでした。タイヤでいえば空気が抜けてしまっている状態です。

過去の経験からGm > 400あれば使えることが分かっていましたが、この2本は厳しいかもしれませんね。これがC to Cの難しいところ。”通電確認済”=基準性能を満たしているとは限らないからです。

今回は結果的にはあまりお役に立てなかったかもしれませんが、今後も貴重な真空管の修復には積極的に取り組んでいきたい気持ちに変わりはありません。ゴミにするのもしないのも使い手次第です。


by audiokaleidoscope | 2024-12-28 23:59 | オーディオ

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