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ふたたび繋がった糸

凡そ趣味というものは熱する時期もあれば冷める時期もあるのが自然なこと。一時期は寝ても覚めても...だったのが気が付いたら全然聞かなくなっていた...という時期もあれば、ずっと電源が入っていなかったのに、最近また聴くのが楽しくて...というお話もよく伺います。

33歳でこの仕事を始めて気が付けば還暦。その間、数えきれないほどの出会いがあり別れも当然あった訳ですが、切れていたと思った糸が再び繋がる経験も沢山してきました。今日もそんな一日でした。
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ショールームに持ち込まれたこのアンプ。SV-63キットの組立途上品でした。
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SV-63 (2003~)

6C33C-Bプッシュプルで出力は40W+40W。6C33C-BをOTLでなく敢えてコンベンショナルなトランス出力付で設計したオール手配線モデル。トランス重量だけで20kgを超える大型機でした。

最初お客さんがこのSV-63を持ってこられた時、正直に言うと誰だか全く分かりませんでした。しかし不思議なものです...お話をしているうち、自分のなかのタイムマシンが動き始めて目の前の顔が20年前のお客さんの顔に戻って、ああ!分かった!!久しぶりですねえ...ということになるのが、単なるビジネス上のお付き合いでない同好の士の良いところです。

訊けば「このアンプを買ったときは60歳で、途中まで作ったんだけど仕事が忙しくて中断して、またやればいいやと思いながら時間だけが過ぎて、気が付いたら80になってました(笑)」というお話でした。再びムクムクと作りたい欲求が出てきたものの、改めて見てみるとCR系が行方不明で続行不可...あとを頼む!!というお話ででした。

20年前と今とではパーツ事情も激変で、例えば電源部に使う500V耐圧クラスのチューブラ型ケミコンなどは絶滅といっても良いですし、機構系パーツもどんどん無くなっています。発注しようとすると”3000個買ってくれるんなら作りますよ”的な返答が当たり前になってきました。

このアンプに搭載の出力管6C33C-Bはミグ(MIG-25)に搭載されていたことで一躍有名になった真空管ですが、ソ連崩壊を機に西側に放出され、一時期は9本入りの木箱単位で投げ売りされていたものですが、いまや殆ど見ることのない貴重な物となりました。

時間がかかっても失われたパーツの代替品を探して、必ずや音が出る状態でお返ししたいと思っています。それが20年ぶりに糸を繋げてくだたお客さんへの、私どもが出来る唯一の返礼だからです。


by audiokaleidoscope | 2024-12-04 23:59 | オーディオ

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