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音像と音場の両立

予定された行程を終え帰って参りました。極めて快適で順調な出張でした。

帰りの車中でずっと反芻していたのは昨日聴いたPersona 9Hの音でした。いままで様々なスピーカーの音を聴いてきましたが、現在のオーディオが最も重視しているのが位相整合であることを再認識した気がします。

真空管アンプのユーザーはしばしば中高域にコンプレッションドライバー+ホーンの高能率なスピーカーを使用しています。これはWestern Electricそしてその後のALTEC LANSINGが確立したサウンドリインフォースメント(SR)技術に基づいた拡声技術を礎としています。

当時から複数のトランスデューサー間の位相整合は大きな問題でした。複数の構造の異なるユニットを組合わせることで生じる位相ずれによって再生音に影響があることは論を待ちません。基本はダイヤフラム位置を合わせることによる”メカニカル・タイムアラインメント”です。
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参照:森本浪花音響計画有限会社(森本 雅記さん), EVIオーディオジャパン

一方でネットワーク(アナログフィルター)による進相, 遅相の問題があり、一般的にはー12dB / cot.の場合は正相 / 逆相, -6dB-あるいは-24dB / oct.の場合は正相 / 正相, -18dB / oct.の場合は聴感で決定と言われてきましたが、実際ホーンシステムの場合の音像位置はダイヤフラムでなくもっと前方(ホーン開口部)であるという議論もあって、最終的には感覚的に決めざるを得ない状況が続きました。

その後、SR用途と民生(家庭)用途が分化し、中高域がホーンからダイレクトラジーターに代わって半世紀以上が経ち、コンピューターの普及もあって計算上の位相整合が画期的に進んだと同時に旧世代の立ち上がり(トランジェント)の良い”音が前に来る”音は次第に淘汰されました。90年代以降のハイエンドシステムではむしろ音はスピーカーの背後に”浮かぶ”ような音に大きく変化し、当時のの海外のオーディオ誌等では”Scopic Sound”とか”Visible Sound"、つまり”見える音”が重視されるようになりました。

旧世代のスピーカーで得られた音のリアリズム、目の前のでシンバルの打擲(ちょうちゃく)が再現されるとかヴォーカリストの唾が飛ぶようなイリュージョンよりも、或る距離感を以てサウンドステージ全体を俯瞰するような音が望ましいとされた結果、Personaのような精密なサウンドステージが再現されるようになったものと思います。

それはまさに2つのスピーカーによって生成された”三次元の音”であった訳です。そして伺ったSさんの音には陽炎(かげろう)のようなホログラフィックな幻影だけでなく、楽器のリアルな”実体”があったのが私には大きな驚きでした。
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これは生成AIに描画させた波紋の拡がりのイメージです。いまのオーディオが水滴が落ちた後の伝播を重視していることを絵に託してみた訳ですが、Sさんの音は立ち上がりと余韻、音像と音像の両立した音で、そのためにPersonaの相棒となったのが私どもの845PPの”熱い音”であったのであれば、新旧スピーカーシステムの両方の良さを知る者としてはたいへん嬉しいことでありました。


by audiokaleidoscope | 2024-11-29 23:59 | オーディオ

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