返ってきた91B
2024年 11月 23日


出荷テストをしながらいつも思うのは、もしここで何らかの問題を自分が見逃したら、いまから6年前カナダから訪ねてきてくれたディーラーが言った「Made in Japanの品質が欲しい」という期待に応えられない、という強い想いです。
しかし時には思いもよらないことが起こるものです。

70万円以上の新品の組立代行品な訳ですから、初期不良であれば当然お客さんから作り手である私どもに何かしら連絡があるのが普通だと思うのですが、それもなし。謎が謎を呼ぶ展開のなかでよっぽど自分が落札しようかとも思ったのですが、それもフェアでないと逡巡していたところ、幸い知り合いの方が落として下さってアンプが一ヶ月ぶりに私どもに戻ってきました。

数時間に亘り連続通電しても問題が出ないので、購入者さんに異常が再現しない事を動画で報告したあと、この機台を組んだ職人さんに来ていただいて隅々まで再検証したうえで、予防保全策として可能性があるとすればここ、という箇所に手当してお返しすることにしました。
フェイルセーフという言葉は、システムや装置が故障や誤動作を起こした場合でも、安全な状態を維持するように設計された仕組みや考え方を指すと思うのですが、残念ながらオーディオは作り手である私たちとお客さんの使い方が共に正鵠を得ないと結果が出ない協働作業のような側面があります。だからこそ不完全な自分であっても仕事の成果物である製品の品質には厳しくありたい、そんなことを感じながら今日も明日も自分と向かい合いながら製品と対峙しています。