岩崎千明さんとD130
2024年 11月 22日
ジャズ喫茶「Jazz-Audio」店主として度肝を抜く大音量で鳴らす方としても知られた岩崎さんは確か50歳を待たずして早世されたと記憶しています。私は亡くなられた後に岩崎さんの文章と出会ったのですが、その偽りのない、飾らずリアルな、まさに”評論”にのめり込みました。
岩崎さんは自作派でもありました。当時オーディオを趣味としていた人は、多少なりとも電気知識があり、アンプであれ、ネットワークであれ、スピーカーであれ、或る程度の自作をされる方が大半だったと思います。その岩崎さんがこんな文章を遺されています。
「自分の手で創るということオーディオに限ったことではないが、どんな趣味においても、自分の手で創るということでの喜びは大きい。
しかし、もっと重要で意義あるのは、その喜びだけでなく、趣味そのものに対しての理解が深まり、非常に広く、深く、熱いものになる。それは物をみる眼、考えるところが深く、徹するところから出てくるものだ。創ろうとするところには、通り一辺の知識ですまなくなり、すみずみまで眼を光らせ、僅かも聴き逃さしと耳をそば立てる。つまり物に接するのに緊張度がまるで違う。…(後略)」
岩崎さんの含蓄のある文章に出逢うと自分の筆の拙さに絶望するばかりですが、その岩崎さんが愛して止まなかったJBL D130を私もサブで使っています。もちろんきっかけは岩崎さんでした。
4343や4344のような重い低域は望むべくもない代わりにキレの良い(スピード感のある)低域が魅力で「40万の法則」に倣って高域を伸ばし過ぎないことが巧く鳴らすコツでもあります。

ショップで聴いた時には良いバランスだったのに家では圧倒的に低域が足らない…はよく伺う話で日本の家庭環境でD130を鳴らすのに必要な出力は1W以下。その音量ではウーハー用に割り振られたD130は動いてくれません。むしろフルレンジ+平面バッフルあたりで鳴らした方がよほど良い結果が出るでしょう。
今日も夜中に、岩崎さんがこの音を聴いたらどんな風に言うだろう…そんなことを考えながらD37改を鳴らしています。岩崎さんの遺稿は今でも「オーディオ彷徨」で読むことが可能です。ぜひオーディオという芸術の真髄を体感して下さい。