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岩崎千明さんとD130

その昔、まだオーディオ評論が”職業”になる前、日本のオーディオ絶頂期に岩崎千明さんがオーディオ愛好家の立場でペンを握り活躍されていました。60年代~70年代中盤の頃です。

ジャズ喫茶「Jazz-Audio」店主として度肝を抜く大音量で鳴らす方としても知られた岩崎さんは確か50歳を待たずして早世されたと記憶しています。私は亡くなられた後に岩崎さんの文章と出会ったのですが、その偽りのない、飾らずリアルな、まさに”評論”にのめり込みました。

岩崎さんは自作派でもありました。当時オーディオを趣味としていた人は、多少なりとも電気知識があり、アンプであれ、ネットワークであれ、スピーカーであれ、或る程度の自作をされる方が大半だったと思います。その岩崎さんがこんな文章を遺されています。

「自分の手で創るということオーディオに限ったことではないが、どんな趣味においても、自分の手で創るということでの喜びは大きい。

しかし、もっと重要で意義あるのは、その喜びだけでなく、趣味そのものに対しての理解が深まり、非常に広く、深く、熱いものになる。それは物をみる眼、考えるところが深く、徹するところから出てくるものだ。創ろうとするところには、通り一辺の知識ですまなくなり、すみずみまで眼を光らせ、僅かも聴き逃さしと耳をそば立てる。つまり物に接するのに緊張度がまるで違う。…(後略)」

岩崎さんの含蓄のある文章に出逢うと自分の筆の拙さに絶望するばかりですが、その岩崎さんが愛して止まなかったJBL D130を私もサブで使っています。もちろんきっかけは岩崎さんでした。

D130は鳴らすのが難しいとしばしば言われます。4343以降のJBLウーハーが300Hz辺りにクロスオーバー周波数を設定したサブウーハー的な鳴らし方であるのに対し、D130は2ウェイで2.5kHz, 3ウェイで1.2kHzという高めの周波数でクロスオーバーされることが一般的。ウーハーとして分類されることが多いD130ですが、元々は15インチサイズのフルレンジです。

4343や4344のような重い低域は望むべくもない代わりにキレの良い(スピード感のある)低域が魅力で「40万の法則」に倣って高域を伸ばし過ぎないことが巧く鳴らすコツでもあります。
岩崎千明さんとD130_b0350085_05113966.jpg
これは我が家のD37 Rhodes改。もともとは175DLHとの2ウェイシステムですが、D130は相当音量を上げないと低域の沈み込みが出ないため、小音量再生用にネットワークをN1200に置き換えて別のコンプレッションドライバーとホーンツィ―ターをごく薄く重ねています。

ショップで聴いた時には良いバランスだったのに家では圧倒的に低域が足らない…はよく伺う話で日本の家庭環境でD130を鳴らすのに必要な出力は1W以下。その音量ではウーハー用に割り振られたD130は動いてくれません。むしろフルレンジ+平面バッフルあたりで鳴らした方がよほど良い結果が出るでしょう。

今日も夜中に、岩崎さんがこの音を聴いたらどんな風に言うだろう…そんなことを考えながらD37改を鳴らしています。岩崎さんの遺稿は今でも「オーディオ彷徨」で読むことが可能です。ぜひオーディオという芸術の真髄を体感して下さい。


by audiokaleidoscope | 2024-11-22 23:59 | オーディオ

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