ときどきC to Cで”ジャンク品”という格付けで出品されている自社製品があるのを見ると心底がっかりします。いいかえれば”ガラクタ”みたいな感覚ですから。経緯はともあれ産みの親としては非常に残念な気持ちになります。
このJB-320LMも不動ジャンク品という名目で流通していたもので”買取の対象になるだろうか…”とお預かりしたもの。一縷の望みをもって買ってはみたもののやはり音出ず、で売却希望のようでした。

私どもにとってのジャンクはトランスが断線しているとかの根本的な瑕疵が生じているか、代替パーツの入手が絶望的な場合のみで、その他のケースに関してはリビルドしてでも修復は可能というスタンスで臨みます。往々にしてジャンクとして流通しているものの多くは単純な誤用によって生じている場合が多かったりします。
案の定といいますか、このJB-320LMは壊れていませんでした。主たる原因は初段6C6の誤方向挿入でした。6C6や310A等はピン配列が六角形状になっており、ヒーターの二本が目視上やや太いことが確認できるものの、無理やり挿入してしまえば入ってしまいます。同様に300B, 2A3などのUXソケットも誤方向挿入によるトラブルも年何回か伺います。電気的リテラシーの欠如によって管面やベースの印字方向のみを頼って挿入するといった単純なミスが原因です。

修正後のJB-320LM。特にNOSの場合、ベース印字方向と電気的な挿入方向に相関はありません。
誤挿入によって6C6のソケットの篏合が悪くなっていたので修正が必要であったものの、その他は何ら問題ありませんでしたので当社基準価で査定させて頂きました。

波形も正常で出力も9W出ていますのでその他の真空管もすべて正常であることが確認できました。ジャンクの汚名を晴らすことが出来てホッとしています。この個体は12月の認定中古で出品予定です。
そういえば時にこんな状態で入荷する真空管もあります。

見事にベース部分が離断しています。これも修復できますが、電源素子は製品品質の根幹ですので、直ったとしても再販はしません。

通常でいえばジャンク扱いされてしまうかもしれないものが、実はまだまだ価値をもっているということが沢山ある…この仕事を通じてそういうことも日々学んでいるように思います。