Q > D
2024年 11月 11日

4ヶ月ほど前、お客さんからツィ―ターからしか音が出ないというトラブルが発生した時のエントリーをご記憶でしょうか?
左右で計8個中6個のユニットが同時期に死ぬということが果たして本当にあるのか…正直よく分かっていなかったのですが、照会したところ輸入元で修理OKということが分かったので、スピーカーを回収し東京に送りました(送料高!)
その結果やはり6個とも交換要ということが分かったのですが、20年前のオリジナルユニットの在庫がなく現行品のサポートパーツをリプレイスするしか方法がないことが分かり、お客さんと協議の結果オリジナル状態で修復する方法を模索しようということになって原状のまま戻していただくことになりました。輸入元の皆さんには大変お世話になりました。
実はそこからが大変でした。

このユニットはデンマーク製のOEM品で、メーカーの名誉にかけて代弁すれば作った人も導入した人もこうなるとは全く予想していなかったに違いありません。以前”10年経ってわかること”というエントリーを書いたことをご記憶の方もおられるかもしれませんが、20年経って顕在化するトラブルもあるということですね。
情報を集めてみたところ、このトールボーイに限らずこのトラブルは同社製品の初期ロットで頻発していることが分かりました。酸性度の高い接着剤で断線するとは恐らく誰も想像していなかったと思います。厄介なことにその接合点がかなり奥まった場所にあり、容易にアクセスできない場所のため下手に作業するとボイスコイルを切ってしまうリスクもありそうです。
検討の結果、安易に手を出すことは取り返しのつかないことになると考え、自力でなく信頼できる方に委ねることとして様々当たったものの、なかなかお任せできる相手に出会えないまま時間ばかりが過ぎていきました。
そんな折、たまたま旧知の知り合いに経緯を話したところ、”その修理なら何度もやったことがある”と仰って急展開。やはり皆さんお困りでなんですね。25年以上この仕事をやってきて素晴らしい技術と経験をお持ちの方と何度も知り合いになる機会を得てきましたが、今回はまさに渡りに船、人と人のつながりの大切さを再認識することとなりました。

この世界では”督促しない”という暗黙のルールがあって、特にヴィンテージ系では半年, 一年当たり前的なことが往々にしてありますが、このスピーカーも”時間はかかったけどオリジナル状態に戻ってよかった”と言って頂く為、最良の選択を出来たと信じています。
いまはQCD(Quality, Cost, Deliverly)がバランスしていることが望まれる訳ですが、拙速であっては何の意味もありません。今回はDよりもQを重視した訳ですが、再びその美音が甦るその日を静かに待ちたいと思います。