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Capital Audiofest 2024 / Washington DC

今週末、ワシントンDCで”Capital Audiofest 2024”が開催されています。
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写真は当社代理店さんが送ってくれた搬入時のスナップ。海外でも国内同様キットと完成品の二本立てでの展開です。

同じオーディオファンでもDIY(=自作派)と一般ユーザーではかなり立ち位置が異なります。自作派はつくるという”過程”を通じて出た音に達成感という”結果”を求めるのに対し、多くの一般ユーザーは市場における”評価”と”ブランド力”を通じて出る音に満足感と共に憧れの機器を手に入れたという所有欲を満たしておられるように思います。

少し脱線しますが、私も20年くらい前までは足繁くオーディオショーに行っていました。既に今の仕事を始めていましたが、当時の当社の業態は完全に”過程”重視。つまり作ることが目的の大半を占める製品企画が大半で、同じオーディオでもテリトリーが違う…例えていえば料理教室の先生が高級フレンチを食べに行くような感覚がありました。

それが時間の経過とともに次第に私どもでも完成品出荷比率が高まってきて、”作って楽しいか”よりも”音が良いか”という目線で見られるようになってきました。同時に自ずと市場のオーディオ製品に対する見方も変わっていきました。

転機はミレニアム頃だったでしょうか。気がつけば価格帯の”桁”が変わってきました。何十万が何百万になり、今や一千万円以上の製品も珍しくありません。その急速な高級化、敢えていえば高額化によって自分のなかで急速にリアリティが失われてしまったように思います。

先日ある方がこんなことを言っていました。

”昔はオーディオを買いたい人が雑誌を買い、ショーに行った。今は買わない人がカタログ代わりに雑誌を読み、買えない商品を眺めにショーにいく”

…もちろん強い購買意欲をもった真摯なファンの存在によって業界を支えて頂いていることは間違いのない事実ですが、以前の熱気あふれた時代とは何かが大きく違うような気がします。それは説明する側にも説明を聴く側にも”等身大の感覚”が希薄になっている、ならざるを得ない市場の事情があるからかもしれません。

昭和の頃のオーディオ雑誌にはその”等身大”がありました。いまのようにオーディオ評論という行為が独立した職業でなく、オーディオ愛好家や音に強い拘りをもつ音楽制作に関わる人たちが、ユーザーの延長戦上で新製品をレビューする、そのリアリティに惹きつけられたものです。菅野沖彦さんや山中敬三さんに代表される大先達が時に厳しい筆致で製品を斬る、その姿に逆に強いオーディオ愛を感じた方も少なくない筈です。”あの先生が使っているから私も買った”なんて方もとても多かった。現在おつきあいのある評論家もそんな方ばかりです。

そういえば96年か97年のステレオサウンド誌のレビューで今でも忘れられない一文があります。故 朝沼予史宏さんが或るスピーカーと真空管アンプを試聴したレビューの最後を”この組合せをこのまま家に持って帰りたい”というような文章で結ばれていました。これこそが等身大。プロでありながら良きアマチュアリズム(ユーザー目線)に心揺さぶられたのかもしれません。

国内であれ海外であれ、私どもの製品を選んでくださる皆さんが、これからも”等身大”を感じて頂けるように初心を忘れてはいけないと感じています。その意味でもキットメーカー出身というのは自分にとっても大きな誇りです。


by audiokaleidoscope | 2024-11-09 23:59 | オーディオ

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