”釈根灌枝”の教え
2024年 11月 06日
最初はSV-S1616D / EL34仕様。

”そんな筈は…”とは思いながら一旦アンプを戻していただいて再検査すると当社環境では異常なし。大丈夫、問題ありませんとお伝えして再納品したのですが、やっぱりダメ。お客さん曰く”真空管を左右入れ替えてもCDプレーヤーを替えてもケーブルを替えてもスピーカーを替えてもやっぱり片側から音が出ない”と仰います。
四の五の言っても仕方ないので、機台交換を申し出て別の職人さんに新たに機台を組立ていただき、いつも以上に念入りに出荷検査をやって再出荷したのが先週でした。それが!やっぱりダメじゃないかという電話がかかってきました。
4ピンの300Bよりも挿入圧が高い8ピンのEL34。S1616Dはサブシャーシで出力管が落とし込んであるので、目視で根元まで挿入されているか否かの判定ができなかったのかもしれません。バージンソケットで固めということもあったのでしょう。今後は”真空管はちゃんと挿さってますか?”の確認が必要なことを痛感しました。
次の事例はReference35です。片chの高域側から音が出ないという連絡でした。新品で通電確認をしなかったバチがあたったかと思ったのですが、リモートで色々と試していただいたところ、HF(高域)とLF(低域)をジャンパーしているプレートの締め込み不足であることが分かりました。


このSV-18Dでも単体では数Wですが、写真右側のオートフォーマー(マッチングトランス)を介することで最適負荷環境が構築され最大出力が3倍以上に増えるというメリットがあるのですが、今回伺ったのは ”音が歪っぽい”というお話でした。アイドリング電流調整はOK, その他の電圧に関しても大きな問題はなさそうでしたので、何を確認いただこうか…と思案していたところ”オートフォーマーの極性が逆でした”という連絡を頂いて一件落着しました。アンプ側に8Ωが負荷され、スピーカー側に100Ωが繋がれば歪むのは理屈通りです。
以上のように想定外な事象が発生した時に私たちはどうしても冷静さを失って客観的に物事を観る(診る)ことが出来なくなります。私もアンプの測定結果がおかしい時、自分を疑うことを忘れアンプのせいにしがちです、よくよく確認したら測定器との接続が間違っていて頭ポリポリなんてことは日常茶飯事です。
過去の失敗経験から申し上げると、”なんかヘンだぞ…”という場合は一旦ご破算、つまり一旦システムをバラシて頭を冷やしてから再接続する、真空管アンプの場合はタマを全部挿し直してみるといったような基本的な所作に立ち返ることが極めて重要な気がします。