今日は時折つよい雨が打ちつける中、作業の一日でした。昨日からの継続案件を今日完了させていきます。
アンプのメインナンスが終わると必ず行われるのがエージングです。作業が終わって測定するだけでは終わりとはいえません。最低でも5時間、案件によっては数十時間通電して過渡的な状況も含めて確認が必要です。
その手順は作業者によってさまざま。

これは職人さんが送ってくれた報告書についていた画像ですが、サーモグラフィーで出力管の暴走発生を温度上昇で確認(防止)しています。非常に有効な方法ですね。

私の場合は電流計で各出力管のプレート電流を監視しますが、手法は違えど目的は同じです。
このSV-P1616D / 7581A仕様は
G-K事案でドックインしたもの。そのため出力管の状況に特に注目してエージングしたのですが、結局この7581Aには問題はありませんでした。或いは別の出力管でトラブルが発生したので7581Aに替えてからメインテナンス依頼下さったのかもしれません。
修理に出される時、なにが原因か特定することが非常に重要ですので、仮に調子が悪くなったら、その状態そのまま(真空管位置もそのままで)お送りいただくのが故障の原因と対策を立案するうえで最も重要です。

せっかくお預かりしたので全体点検を。MT管ソケットの一つの篏合が甘くなっていたので交換しておきました。

そして定番のArizona化。メインテナンスレポートは昨日書いたのですが今日までエージングを延長して終了となしました。SV-P1616DはKT150 / KT170が人気ですが、6L6GC系の音もとても良いので、お持ちの方はぜひお試しを!温度感高くしっとりと優しい多極管ppサウンドを楽しめます。
続いてはJB-320LM / PSVANE WE300B仕様。左chから音出ずという申し出でお預かりしました。

まずは現状把握と対策立案です。オシロで出力信号を確認するとLchが非常に不安定且つレベルが低い状態であることが分かりました。このように申し出の不具合と確認状況が一致するとメインナンスがスムーズに行うことができます。
内部配線を確認してもイモハンダやパーツの過熱状況は確認できなかったため、真空管を疑っていきます。この場合は初段→ドライブ段→出力段の順でそれぞれL/R入れ替えてみて不具合が移動すれば、その真空管が重要監視対象として特定が出来ます。ちなみに整流管が悪い場合は不具合が片chに現れることはありません。電源のタマですから。

セオリーに従って初段から診ていったら即患部が判明。Lchの6C6のグリッド電極がグラグラで半分外れかかっています。この場合一本交換で済む場合も多いのですが、RchのGmも下がっていましたのでペア交換することにしました。

交換用に用意したのはJoint Army and Navy CRC (=RCA) 6C6(1943年製)。6C6は310Aの6.3V管として有用ですが、アンプで使われることが少ないため非常に安価です。この年代のNOSで人気球の場合は最低でも数万円しますから、いかに重要と供給で価格が決まっているかがよく分かりますね。

6C6を替えたあと、ヴォリューム, セレクターのアルコール洗浄を行って、機構締結(ネジ締め)を全箇所再点検。最後に
竹ピンセットチェックを実施して完了としました。

PSVANE WE300BとJB-320LMの相性は極上。今回は事前に真空管の左右入れ替えチェックをご自身でやられていたら、6C6の購入で修理を回避できたかもしれませんが、定期点検を兼ねてしっかり診させていただいたので、お預かりした意味は十分あったと思います。
明日は年一の地元の祭礼で朝から餅をついたり、ちらし寿司をつくったり親族一同勢ぞろいで大騒動になりそうなので、ブログはお休みさせていただきます。世の中は三連休ですね。どうぞ良いお休みを!