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ノーマルテープとクローム(CrO₂)テープを比較してみた

急に気温が下がって夜明け頃は肌寒いくらいになってきました。こんな季節になってくる糖度の高いものに対する摂取欲が高くなります。知らず知らずにうちに人間の五感あるいは生理的欲求は環境によって変化することを改めて感じます。

今日はオーディオ好き人間にとってメディアによって聴感がどう変化するかを検証してみたいと思います。素材はカセットテープです。

昨今カセットテープが再び盛り上がっているという話を耳にした方も多いと思います。若い人たちにとっては”エモい”そうですが、私たちが若かりし頃、昭和50年代には嗜好を超えた必要欠くべからざる”必需品”でありました。いまのカセットブームに対して密かに危惧するのが、一時的なファッションであってほしくないということ。そして当時と今ではハード面だけでなくメディア(テープ)の供給的にも環境が全く違うことです。

いまのカセットブームをして中には”デジタルとは違う低域の実体感が云々…”と尤もらしいことを言っている人もいますが、そもそもカセットの音がそのように変質したものであるという認識は大きなミスリードです。しかしながら現在のハード供給面は当時とは比べものにならないほど脆弱ですし、メディア的にもお世辞にも我々のニーズを満たすクオリティであるとは言い難い状況であることも事実です。

若い人たちが音楽を聴く手段をカセットテープに求めてくれることは大歓迎ですが、全盛期のカセットが如何に優れたものであったかを知っておくことも重要と考えます。そこで今日はノーマルテープ(Type I)とクロームテープ(Type II)の音を比較する実験を行ってみたいと思います。

環境は以下の通りです。

1)Vinyl to Cassette
Album=Jan Lundgren "WHEN LOVE COMES AROUND" (MMSV-1001:2010)
Song Title=Under Paris Skies (B1)
Cartridge=Top Wing "Blue Dragon”
Phono Equlizer=SUNVALLEY "SV-310EQ"
Cassette Deck=Victor "TD-V731"(’80s) *Dolby C, MPX Filter:ON, HX Pro:ON

2) Cassette to Digital
Sampling Rate=44.1kHz
Bit Resolution=16bit
Digital Recorder=Korg MR-1000
Application=SONY Sound Forge Audio Studio 11.0
Effect= None

私の家のカセットデッキは80年代終わりに入手したもので、高級品ではありませんが近年フルオーバーホールをした個体です。カセットテープは恐らく昭和の終わり頃の未使用品を今回の実験のために使用しました。
ノーマルテープとクローム(CrO₂)テープを比較してみた_b0350085_01514059.jpg
左:ノーマルテープ(Konika), 右:CrO₂(クローム)テープ(AXIA)

本当はメタルテープも用意したかったのですが、手持ちは全て録音済みで新品がなかったので今回は二種類で比較します。厳密にはテープ長も合わせたかったのですが、新品ではノーマル90分, クローム80分しかなかったことをお断りしておきます。

音源は…
ノーマルテープとクローム(CrO₂)テープを比較してみた_b0350085_01203838.jpg
ソースはヤン・ラングレン"WHEN LOVE COMES AROUND" (MMSV-1001:2010)。記念すべき当社初共同プロデュ―ス作です。くわしくはこちらをご覧ください。。

今回比較実験を行うにあたりLP→カセット, カセット→デジタイズの両面で設定は一切変えておりません。変わったのはカセットテープのみです。

音源は下の画像クリック+▶で自動再生します。聴き込むと新品カセットとはいえ30数年の経過によって磁性体の劣化が所々に見受けられますが、全体としてノーマルとクロームの音の差は感じて頂けるのではないでしょうか。高品位なヘッドフォン等で聴くとその差は更に明確です。
ノーマルテープとクローム(CrO₂)テープを比較してみた_b0350085_01203881.jpg
クロームテープ録音

…皆さんの耳に両者の違いは感じられたでしょうか。

いま再びカセットテープに注目が集まっているのは非常に歓迎しつつも全盛期のカセットテープ、そしてカセットで聴く音楽が如何に優れたものであるかも私たちは伝えていかないといけないのではないか…そんな気がしています。


by audiokaleidoscope | 2024-10-29 23:59 | オーディオ

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