いかに不便を楽しむか

オーディオ好きのカメラ好き, オーディオ好きのクルマ好きとはよく言われることですが、真空管アンプユーザーの場合はキャンピングカーやバンタイプの車を車中泊仕様にカスタマイズして楽しんでいる方がけっこういらっしゃいます。

車内に冷蔵庫や電子レンジ、なかにはトイレやシャワーまで装備されている車もあったり、購入時からDIYしてどんどん自分色に変えていくところが何となくオーディオのグレードアップと似ているといえなくもありません。
これはずっと前、家族と湯河原に行った時の写真ですが、なかには二週間以上も北海道をキャラバンしたり日本一周する強者もいます。今日夕方いらっしゃったお客さんもそんな一人。オーディオの話そっちのけで盛り上がりました。

その方は勤めを終えられた後、時には一人で、時には仲間と年間100日くらい津々浦々を旅していらしゃるそうですが、面白かったのは…

「キャンピングカーの最大のポイントは”いかに不便を楽しむか”に尽きます。寝るにしても家のベッドよりも狭かったり、生活道具も家そのままという訳にはいかないし。観光バスや新幹線で温泉宿に行くのとは全然違う訳です。でもその制約のなかで如何にメリットを最大化するかに燃える…みたいな。

イメージ的には真空管アンプは出力は小さい代わりに消費電力が大きいとか、夏は熱くて使っていられない、何年かに一回は真空管を交換する必要がある……キャンピングカーはエンジンが非力な割に燃費が悪い、夏の車内は温室以上で冬は鉄のテント、タイヤもよく減る…でも使う楽しさは最高というのもそっくりです。どんどん欲が出てきて車内レイアウトを変えたり、装備品を足していくその過程の面白さもオーディオと似てますね。

車内のスペースは1~2平米しかないなかで、何かを諦め、何を優先するかの試行錯誤の繰り返しみたいなところがあって、いつも何かをDIYしてますね。このプロセスが一番楽しい」

という話でした。

物事を否定的に捉えるとき、私たちは定量的(数値的)に物事を理解しがちです。こんなに大きいとかこんなに高いとかいうネガティブバイアスは数値化されやすい訳ですが、メリットは”楽しさ”や”感動”という数値化できない定性的(感覚的)な視点によって評価されることが多いかもしれません。

以前あるCMで「お金で買えない価値がある」という”プライスレス”キャンペーンがありました。キャンピングカーも真空管アンプも手を入れながら自分だけの至福の時間を過ごすという意味ではよく似ていますね。私もいつか当て所(あてど)ない旅に出てみたいと思っています。