卸売りをせず、一般のオーディオ店で購入が出来ないという特殊な業態で25年以上やってきたこともあって、遠方からのお客さんをお迎えする機会はかなり多いのですが、三連休明けの今日、徳島からいらっしゃったKさんは、当社への試聴のみが目的で、それも日帰りと伺ってちょっとびっくりしました。
事前のメールでは初心者向けのシングルアンプを作ってみたいということで、エレキットの基板アンプが良いだろうと何台か用意していたところ、作ってみたいのは手配線ということが分かり、SV-S1616Dにターゲットを変えて、手配線アンプ製作の楽しさと奥深さを説明。

シャーシ内部の写真を見ていただいたり、

マニュアルがどうなっているかを見ていただいたり。
”むかし中学でインターフォンのキット作りましたよねえ”などと話しながら、若い頃は仕事や子育てや住宅ローンでオーディオどころではなかったという方が還暦を過ぎて、ふと気づくと昔やってみたかったオーディオに再び想いを馳せる…そんな方が沢山います。そして折角作るなら昔憧れた手配線アンプ、そのハードルは決して低いものではありませんが、一ケ所づつ積み上げていけば必ず良い音で鳴るのがメーカー製キットの利点でもあります。
今日も津々浦々でキットと対峙される方がいらっしゃいます。その時々で”どうして上手くいかなんだろう…”と天を仰いだりイライラしたりしながらも、極めた頂上の感動は比類ないものであるに違いありません。
その昔、わたしが電気の知識もなく、とにかく作ってみたいの一念で某メーカーの真空管アンプキットを買った時のことです。どうにも上手くいかなくて、誰かにすがるような思いで購入店に電話したところ、”本当に作ってやろうと気持ちがあれば絶対出来る。もう一度見直してごらんなさい、人に頼る前に”、と喝を入れて下さった方がいます。あのひと言がなかったら、いまこの仕事をしていなかったかもしれません。
あの時の自分とお客さんの不安を重ねながら、私たちに出来るのは日々メールや電話でサポートをすることだけですが、せっかくの機会、モノづくりという人間の根源的な営みを大いに愉しんで頂きたいと思った今日でした。遠くからのご訪問有難うございました。