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四畳半で象を飼う

今日は修理完了品の引渡しや入庫品の内見など賑やかな一日でした。
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写真のオープンリールやビッグなスピーカー、オーディオラックに真空管アンプが居並ぶ様子はオーディオ愛(沼)のアイコンでもあります。

…あれは私が30代終わり頃でしたから20年ほど前のことになります。以前どこかで書いた記憶がありますので覚えていらっしゃる方もおられるかもしれません。

確かゴールデンウィークだったと思います。会社で新製品のマニュアルを書くためにアンプの組立試作をしているときに一本の電話が入りました。SV-5という限定数十台の845トランスドライブPP(モノ×2台)、Western Electric 352A - Western Electric 311B - RCA 845(typeB)という構成でしたが、そのアンプを使っておられるお客さんからアンプの調子が悪いというご相談でした。

何度か電話でやりとりした後も解決せず、これはもう行くしかない、と腹を括って”5時間下さい”と申し上げ、そのまま会社から車で都内へ向かいました。

こんな言い方は少々不謹慎ですが、その方はALTEC A5をお使いと伺っていましたし、自宅住所は都内でも指折りの高級住宅街、さらに当時数万円からせいぜい10万円くらいの価格帯だった当社製品の中で10倍以上の価格のアンプをお求め下さった方が”どんな部屋でどんな風に聴いておられるのだろう?”という興味も多分にありました。

薄暮の時間帯に到着したのですが、イメージしていたような邸宅は見当たりません。電話するとその方が出てこられたのはいわゆる木造のアパートでした。案内いただくと四畳半の部屋にまさにALTEC A5とオープンリール等のオーディオ機器がギッシリ詰まっている異空間。

”手を伸ばせばすべての機器にアクセスできてリモコンは一切不要。四畳半で象を飼うとはまさにこのこと”と自嘲気味に仰っていましたが、通常数m以上の距離がないと音の焦点を結ばないと言われるオールホーンのA5が手の届くような位置で、出力50W / chのSV-5が恐らく0.1W以下で鳴っている…その光景に最初は正直驚きましたが、お話を伺いながらトラブルがWE311Bのグリッドキャップの緩みであったことが分かり、その方も私もリラックスしてお話しているうちに打ち解けて、そこから永いお付き合いが始まりました。

その時は確かに驚きましたが、この仕事をしていくなかで、案外”四畳半で象を飼う”系の方が多くいらっしゃることが次第に分かってきました。六畳に5ウェイのマルチシステムを構築されている方、ワンルームマンションでエレボイ30W(30インチ=78㎝のサブウーハー)を使っている方、果ては巨大なWestern Electric 15Bを六畳一間で使っている方…傍目には常軌を逸しているように見えるかもしれませんが、皆さんすごく真摯にオーディオに向かい合った結果こうなった、という方ばかりでした。

実用を超えた拘りを「趣味」というならば、まさにオーディオは趣味の王様のひとつ。誰が何と言おうと欲しいものは欲しい!そういう皆さんが今日もショールームにいらっしゃいます。四畳半で象を飼う…これぞまさに男のロマン。これからもそういう人たちと共に夢を語り、一緒に楽しんでいけたら最高だと思っています。





by audiokaleidoscope | 2024-10-06 23:59 | オーディオ

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