真の周波数特性
2024年 10月 01日
今日公表するデータは組立代行品出荷時に社内の記録として保管したデータを片対数グラフに変換したもので、すべて全く修正していない真の周波数特性です。
よくカタログで”周波数特性 20Hz~20kHz”などと記載されていますが、これは規格上の-3dBポイントを示しているだけで、アンプの性能や実態を評価する資料にはなりません。何故なら最も音質に影響を与えるのは”可聴帯域内の振舞い”であり、それこそがアンプの個性(キャラクター)といえるものだからです。
では実際に見ていきます、当社代表機種の周波数特性です。
次はプッシュプルにおける違いを示します。これこそが多極管アンプと三極管アンプの音の違いといってもよい、大きな差異が生じています。
この2つのデータは同一機台で真空管を二種類納品した際の取得データですので、かなり近似していますが典型的な三極管アンプの周波数特性に一致しています。ただ300Bより高域側が”いかり肩”であることに注目して下さい。このケースではPSVANE WE211が通常の211よりも高域が伸びていることで、通常の211はもう少しロールオフポイントが下に出ることが多いことを付記しておきます。
続いてはSV-8800SEを見てみます。
ここで注目いただきたいのは上のSV-P1616D / KT170仕様との差です。基本的に見事なフラットレスポンスですが、P1616Dは下側が10Hzまでフラットであるのに対し、8800SEは上側が100kHz(以上)までフラットで、実際は200kHz以上まで伸びていることです。
最後にSV-91Bです。
20Hzより少し上、実際に私たちがいちばん低音と感じる35Hz辺りが少し盛り上がっているのが、当社アンプの特徴の一つと言えるかもしれませんが、アンプのヴォイシング(音決め)で大切なのは数値的にどこまで伸ばすかでなく、全体のバランスです。
仮に音の”やじろべえ”があるとすれば中心は何Hzになるでしょうか?
一般にオーディオの世界では1kHzを基準に考えますし、私どもも測定上は多くの基準点を1kHzに置いています。他方、音づくりに関して言えば仮に人間が20Hz~20kHzを知覚できるとして、20Hzから5オクターブ上は640Hz, 20kHzから5オクターブ下は625Hzですので、個人的に音の重心は600Hz~650Hzにあると考えて音作りをしています。
オーディオ業界が真空管から半導体の時代になりフラットが当たり前になりました。しかしギターで使われる木材を例に挙げるまでもなく、メイプルのようにクリアで明るい音色もあれば、マホガニーのように暖かく豊かな音色のアンプがあっても良いと思いますし、あるべきだと考えています。