私どもの製品が海外のお客さまにお客さんに使っていただけるようになって20年程になると思います。
最初は在外邦人の方からのリクエストに個別的にお応えしたのがきっかけ。その後、アジア, 北米, 欧州からパラパラ連絡をいただくようになって100V仕様の製品をステップダウントランスと一緒に出荷するようになりました。
その後、時を経て正規代理店との契約が締結され120V / 240V仕様の製品を製造するようになり、シカゴ, NY, ミュンヘンなどの展示会に製品が出品されるようになって、いまや組立代行品に関しては国内よりも海外の方が多い状況となっています。
その一方で恐らくC to C市場から海外へ流れる製品も少なからずあるようです。願わくば良い状態で使って頂けていると嬉しいのですが、なかにはメインテナンスを必要とする品物も出てきます。
このSV-38Tは中国 / 日本間の海運業に携わっておられる方からお預かりしたもの。不調ありということでオーバーホールを行うことになりました。
開腹してみるとかなり状況は悪く、ケミコン, ブリッジダイオードが劣化し膨満あるいは液漏れを起こしている状況でした。次のメンテのチャンスがあるか分からないような状況ですので、この機会に半リビルドに近い改修を行うこととしました。
抵抗の劣化がなかったのは実損失の2.5倍以上の余裕のあるワッテージを選んでいるからですが、ケミコンは確実に経年劣化しておくので10~15年をメドに確認が必要です。
上の写真はSV-38Tで使われていたドイツF&Tの高信頼ケミコンですが、ほぼ全滅という状況でした。よく真空管の寿命を気になさる方は多いですが、設計的に適切なディレーティング(余裕度)をみられたアンプでは真空管よりも内部パーツの方が劣化が早いというケースもあります。また累積使用時間だけでなく通気性(シャーシ内温度)でもかなり状況は変わります。
ひと通りパーツ交換が終わって通電確認をしているところです。まさに845ならではの電圧ですね。その後、出荷前点検の全チェック項目をクリアしていることを認証して報告書にハンコを押して認証完了。その後、機種によって5~20時間のエージングを行って終了です。
新品同様に復旧したSV-38T。これで安心してお使いいただくことができます。
一旦私どもの手を離れたあとに故障が起こらないよう、念には念を入れてエージングしていきます。測定器で状況をモニターしながらスピーカーに繋いでおいて気になるノイズ等が検出されれば再点検です。
年限なくメインテナンスすることはなかなか出来ることではありませんが、態勢が維持されてパーツがある以上は継続していきます。いま修理報告書の管理番号は1,900あまり。累積出荷件数が約82,000ですから2%強がドックインしたという結果になります。
キットメーカーとしては少ない方かもしれませんが、それでも大変な数。これからも私どもの製品を使って下さっている同じ全てのユーザーに同じサービスを提供できるよう頑張っていきます。