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MMかMCか?

今日は先日の台風で順延となった試聴の皆さんの振替日でした。

午前中はJBL4344を自宅に迎え入れるための作戦会議。スペース的, 予算的にはOK…あとは奥さんの事前了承を得るためにどう外堀を埋めていくか協議した結果、次回の試聴は奥さまを同道いただいて一緒に音を聴いていただくのが良いのではないかということになりました。

奥さまご随伴の試聴対応も結構ありますが、時にご主人の散財防止のための見張り番的な感じで同席される場合もあります。でも時間をかけて、家でご家族と一緒に豊かな時間を過ごすための大切な道具がオーディオであることがだんだん分かってくると、大半のケースで味方になって下さるものです。

仕事はリタイアしても人生はこれからが総仕上げ。これからどう豊かな日々を送ろうか、と考えた時に良い音楽を良い音で、と考えて下さる方が多いのは嬉しいことです。

午後のお客さんは現用のMMカートリッジを幾つか持ち込まれて、試聴室のMCと比較したいというテーマでした。
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この写真は終盤にDL-103R PROをSV-EQ1616Dで内蔵ヘッドアンプと外付けのMCトランスで比較試聴している時のスナップですが、多くの時間をMMとMCの比較に費やしました。

お客さんは自分のMMカートリッジの音を聴いて”こんな良い音で鳴るんだ…”と幾度も仰って、いままで苦労されていらっしゃった様子でしたが、同様にヒエラルキー的にMC > MM的な呪縛から逃れられない方は多いと思います。

以下、個人的な見解ですが情報量と音場的(空間的)表現という眼目においてMCが有利という側面は認めつつも、MMが劣っているとは思いません。
MMかMCか?_b0350085_22314409.jpg
上の写真は帰宅してから名盤、荒井由実の”ミスリム”(1974)を聴いているところですが、MCの良さを決定づけるのはフォノEQ、更にいえばMC昇圧トランスのクオリティ如何に掛かっていると申し上げて差し支えないと感じます。

フォノEQは大きくNF型とCR型に分かれ、一般にCR型の方が優位と言われますが、それ以上にMCカートリッジ用に20dB(10倍)程度の利得を得るための昇圧をどうするかでカートリッジ自体のポテンシャルを引き出せるかどうかが決まります。

廉価帯では半導体を使ったヘッドアンプが使われることが多いですが、物によっては意外なほど良い音を聴かせてくれるものもあります。ただ経験上カートリッジの推奨負荷インピーダンスが10Ω以下の場合は良質なMCトランスが強く望まれると感じます。また数十Ωのカートリッジの場合はローインピーダンス用のマイクトランスが思いのほか良いマッチングを示す場合も少なくありません。

例えばALTECの4722マイクトランスなどはワイドレンジでないものの、ボディがしっかりしていて位相感もよくインピーダンス的にも一次側38Ω : 二次側50kΩと汎用性もありお奨めです(今となってはかなり高価になってしまいましたが)。

もう少し突っ込んだお話をしてしまうと高級MCカートリッジ用としてワイドレンジを標榜している高価なMCトランスの一部には周波数特性と引き換えに位相特性がトレードオフされているものもあり、妙に音が左右に散ってしまって定位が悪かったり、上のユーミンのアルバムにようにアナログマスターから切られた一部のLPでは超低域のテープノイズがフワフワと重畳して違和感しかない物もあったりします。私どもではMCトランスは橋本一択ですが、それはピラミッドバランスの帯域感と位相の良さに尽きると申し上げて良いかもしれません。

あとはシステム全体グレードとのバランスが重要で、カートリッジだけアップグレードしても増幅系(アンプ), 変換系(スピーカー)の品位がバランスしていないと良い結果が出ない場合も往々にありますので、カートリッジに関しては一点豪華主義はなかなか難しいと言えるかもしれません。

今日のお客さんも単純な価格比較で50倍もの差がある各種カートリッジを比較された結果、”MMがこんなポテンシャルをもっているとは思っていませんでした。カートリッジは現状としてフォノEQのグレードアップの方が大切ですね”と納得された様子でした。こういう経験も整備された環境で、自分が日ごろ聴いているソースで比較して初めて分かることかもしれませんね。


by audiokaleidoscope | 2024-09-08 23:46 | オーディオ

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