人気ブログランキング | 話題のタグを見る

リンダ・キャリエールの”旬(しゅん)”

「旬」(しゅん)という言葉があります。辞書的にいえば"最も味が良い"あるいは"物事を行うのに最も適した"時期という意味で古来日本で使われてきた言葉です。言い換えれば、早すぎても遅すぎても”旬”とは呼ばれない訳です。

ここに一枚のLPがあります。ファーストプレスが予約で完売になってしまい、セカンドプレスを何とか購入することができた私にとって待ちに待った一枚。数か月前に某所でテストプレスを聴かせていただいた時に、必ず手に入れようと思っていたタイトルでしたので嬉しさも一入(ひとしお)です。
リンダ・キャリエールの”旬(しゅん)”_b0350085_01115687.jpg
パッと見プロモ盤のようなジャケットが何かを暗示しているようです。
リンダ・キャリエールの”旬(しゅん)”_b0350085_01115510.jpg
最近リリースされたリンダ・キャリエールというアーティスト名がそのままアルバムタイトル。ALFAというレーベル名にタイムスリップした方もいらっしゃることでしょう。

プロデュースは細野晴臣さんでレコーディングは1977年。ALFA設立直後、まさにYMO前夜といえるその時期に細野さんがプロデュースしたこのアルバムは何と生粋のソウル・ミュージックです。フランス, アメリカ, カリブの混血女性が唄うソウル・ミュージックとその後の細野さんYMOの活躍に時空の断層を感じる向きもあるでしょう。

山下達郎さん, 吉田美奈子さん, 矢野顕子さん等、錚々たる作曲陣によって書かれた曲に細野さん昵懇のミュージシャンらが参画。細野さんは勿論ですが、矢野さん、坂本龍一さんがキーボードで参加している曲もあり、当時日本の音楽シーンの最前線にいた人たちが世界に斬り込もうとした気概のようなものを感じるのは私だけではない筈です。そしてここからは想像ですがジャポニズム的な要素のまるでない洗練された日本発のソウル・ミュージックは世界というマーケットに対してまだ”早すぎた”のではないか…そんな気がします。

いま聴いても旧さは全くなく、サウンド的にもまるで昨日録られたばかりのような鮮度感。A面一曲目イントロでドラムスティックの動きが目の前で見えるようなリアリズムは、このアルバムが時系列的にカテゴライズがされることを拒否しているかようです。

半世紀近く前に録られた音源がいま”旬”を迎えていることは或る意味痛快です。何百万回再生などという尺度とは関係のない本質的で普遍的な音楽の力を感じられる一枚です。ぜひ良いオーディオで聴いてみて下さい。

by audiokaleidoscope | 2024-09-04 23:59 | オーディオ

SUNVALLEY audio公式ブログです。新製品情報,イベント情報などの新着情報のほか、真空管オーディオ愛好家の皆様に向けた耳寄り情報を発信して参ります。


by SUNVALLEY audio
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30