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真空管歴史探訪

台風が熱帯低気圧に変わったものの時折強い雨が降る今日、作業場でお預かりしている買取依頼品の査定と譲っていただけることになった製品の整備とエージングを行いました。
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アドバンスHC-2(2A3シングル)と樽バックロードです。セットで販売したいくらいWell Balanceで鳴っています。

このHC-2はメーカー組立品で出力管はRussia製の2A3が付属しますが、今日は先日ブログでご紹介したRCA 2A3(Joint Army and Navy CRC-2A3 / VT95)のエージングを兼ねて通電しています。
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画像を拡大いただくとわかりますが、RCA‐Victor Divisionから1943年に納入された軍用管です。
Submarine Signal-Corps(米軍潜水艦信号隊)が2A3を何の目的で調達したのか不明ですが、当時米海軍と共同開発していたEcho-Sounding(音響測深)あるいはEcho-Ranging(音響測距)技術と関係があったのかは興味のあるところです。

おそらく通信用途で使用されたものでしょうが、製造から約80年を経てオーディオ用途で人々の心の安らぎのために再活用されているのがせめてもの救いです。

軍用真空管といえば送信管を忘れることが出来ません。本国から遠く離れた潜水艦に指示を出すため等の目的で1920年代からVT-4C / 211を始めとした各種送信管が多数製造されました。ちなみに845はRCAが1930年代に開発した送信管で、放送局や211とは発振周波数が異なる用途での無線通信に使用されたようです。

その後これら送信管はオーディオ用として使用した場合のリニアリティの高さが注目され、音質的に優れた直熱三極管で且つ高出力が得られることから非常に高い人気を得ました。他方オーディオ用途では高電圧, 大電流から設計上, 製造上の技術力が問われることから少数派で、現在 数少ない組立キットとして211/845コンパチで販売されているのがSV-S1628Dです。
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この個体は845と211両方が付属した状態で買取が成立したので、整備が完了次第、出品を予定しています。いまや99%以上民生用でしか使用されない真空管ですが、歴史を紐解くといずれも国策レベルの通信技術あるいは拡声技術に繋がっているものが多かったのです。
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今日査定させていただいたSV-Pre1616DにはBrimar CV4003と12AU7が付属していました。12AU7という呼称は民生用として知られていますが、CVナンバー付きの真空管は別用途(Special Use)で知られています。
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CVは”Common Valve Number”の略語で、もともとはイギリスの軍規格に基づいて付けられものです。特に信頼性と耐久性が求められる環境での使用を前提として製造され、主に無線機やレーダーシステムなどに使用されましたが、現在は特に音質にこだわるオーディオファンやプロの音響技術者が賞用するほか、高精度が要求される計測機器や科学研究分野で使用されることもあります(現行球でCVナンバーがついているものは単なるオマージュで品質的裏付けはありませんのでご注意ください)。

…こんな感じで私たちが何の気なく使っている真空管にも歴史的背景があることを知ると、さらに愛着が増すのではないでしょうか。大切に使っていただければと思います。


by audiokaleidoscope | 2024-09-01 22:56 | オーディオ

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