今日は情報解禁となりましたエレキットの新製品TU-8400についてレポートします。
メーカーのご厚意で先日量産サンプルをお借りすることが出来、このニューモデルの特徴だけでなく前作
TU-8200R(在庫僅少)からの変化点、更には音質比較まで徹底検証させていただく機会を得ましたので詳しく掘り下げていきたいと思います。
これがTU-8400。精悍なブラックフェイスがカッコイイですね。形式的にはボリューム付パワーアンプで入力RCA1系統, ステレオミニプラグ1系統を装備しています。
TU-8200Rから継承された自動調整の固定バイアス回路により、自己バイアスアンプと同じ手軽さで無調整差替えを楽しめます。またプレート電圧をHIGH, LOW切替えることで6V6, 6F6はLOWモード, HIGHモードでは6L6系, KT66, KT88, KT90, EL34, 5881, 7581, 6550, さらにはKT120, KT150, KT170までカバーします。
ではまず外観から見ていきましょう。
JJ EL34
Gold Lion KT66
JJ KT88
Tung Sol KT170
このように各種出力管を無調整で楽しめるというのは、初心者の皆さんだけでなく多くのオーディオファンにとって大きな福音となる筈です。
これがHIGH / LOW切替スイッチ。6L6系以上のプレート損失を有する出力管ではHIGHモード推奨ですが、最大出力優先でなければ音質上の選択としてLOWモードでの稼働もOKです。
シャーシを開けてみます。ガラスエポキシ基板を立体的に組んでいるのはエレキットならではのユニークな機構設計といえるでしょう。
リアパネルも基板に直接入出力ターミナルを組み付ける方式です。負荷インピーダンスは推奨6~8Ωです。写真を取り忘れましたがフロントパネルにステレオミニジャック専用入力が用意されています。
このINPUT2はOPアンプによるゲインアップが図られており、携帯音楽プレーヤーなど出力電圧が制限されている入力機器を使用する場合に便利な機能といえます。
TU-8400でもカップリングコンデンサーのアップグレード用のスペースが用意されています。もはやデフォルトともいえる音質向上策として認知されているという証左ですね。
これも要注目の機能PENTODE(五極管接続), UL(ウルトラリニア), TRIODE(三極管接続)が選べます。音質と出力の両立という見地から基本ULを推奨しますが、最大出力は半減するものの、繊細な音を三極管モードの聴きたい時にTRIODEを選ぶ選択肢もありです。
電源スイッチはTU-8200RのトグルSWから上位機種同様プッシュ式に変わりました。
ヘッドフォン出力は6.3㎜φの三極標準プラグに対応しています。インピーダンスは8Ω〜600Ωに対応。インピーダンスによってゲインが変わるので最適ゲインを選択できるよう三段階のレベル選択が可能です。
アウトラインの紹介はここまで。ここから電気的側面の検証に入っていきます。
前作TU-8200R(左)と比較試聴している状況。カラーリングは違うものの、外観的に共通部分の多い後継モデルのように見えますが、各種測定をしてみたところ電気的に両者は大きく異なることを確認しました。
※TU-8400は量産試作のため製品とは異なる可能性があります
ここで注目いただきたいのがゲインです。TU-8400とTU-8200Rを比べてみると約12dBのゲイン差があります。12dBと言われてもピンと来ないかもしれませんが電圧比でいうと4倍もの差です。
メーカーリーフレットにも書かれていますがTU-8400は基本的にプリアンプ併用を前提とした設計になっているという点でTU-8200Rとは根本的に設計理念が異なっているという点は押さえてきたいところです。つまりTU-8400は将来のセパレート化への発展性を秘めている製品で、そのため予備的にOPアンプでゲインを稼いだINPUT2が用意されていると理解できます。
その他の注目ポイントは周波数特性です。TU-8200Rが典型的な多極管シングルの周波数特性を示しているのに対しTU-8400はより低域寄りのバランスになっていることに気づきます。ちなみに出力トランス的にはTU-8200RもTU-8400も一次側インピーダンス3.5kΩでトランスメーカーも同一。推測ですが一次側インダクタンスを稼いで低域を伸ばしているのではないかと思います。
ではいよいよ試聴に入ります。
まずはTU-8400単独、そしてプリ(SV-310)を追加したセパレート構成の順に聴いてみました。出力管は写真のGold Lion KT66, KT170の二種類で行いました。入力はOPアンプを経由しない入力1(RCA)を使用します。
TU-8400単独ではTU-8200Rのような吹き上がるようなパワーは影を潜め、滑らかで繊細感のある音調です。ヴォリューム位置はTU-8200Rよりかなり上がっていますが90dB以上の能率のスピーカーであれば単独使用でもストレスを感じることはありません。小音量でも下支えのしっかりしたスケール感は単独運用でも十分に感じられます。
次にプリアンプを加えたセパレート運用では別の個性が現れました。TU-8400の大きな個性である低域の伸びに厚みが加わってスケール感が格段に向上します。上の比較表からも理解できるかもしれませんが、TU-8400はプレート損失の大きな出力管ほど高効率(出力ロス)が小さいことが分かります。メーカーがいう「プリアンプ併用前提」はこの結果からも明らかです。
まずは単独で楽しむ、そしていつかグレードアップでプリを追加する…その再生音の品位向上を楽しめる格好のサンプルがTU-8400といえるでしょう。最初の一台を作ってみたい方にも終(つい)の一台を探している方にもお奨めできるエレキットの新製品に心からの拍手を送りたいと思います。