今日はメインテナンス上がりの出荷検査に通常よりも時間がかかりました。まずはSV-722 type M7。これは”After”状態ですが、実はここまで来るのに相当苦労しました。

カルテでは2002年ロット、つまり最初期のキットで劣化部分の修復は通常と概ね変わりませんでしたが、何が大変だったかというと外観上の汚れです。過去約2000件の修理品をお預かりしてきましたが、トップクラスの凄さだったかもしれません。
”Before”状態の写真は載せませんが、簡単にいえばシャーシ全体はもちろんツマミ類や内部まで、いわゆる”着色汚れ”で全体に鼠色っぽい茶色に煤けて汚れがこびり付いているような状態でした。
C to C取引の製品紹介画面で”当方非喫煙者です”とか”ペットは飼っていません”等と付記されているのを見ることがありますが、ご自身では気づかないうちに生活習慣のなかで様々な変化が起こるということなのでしょう…それだけ日々身近で使って下さったと感謝しつつ、無水アルコールで外装から端子まで隅々まで清掃を行いました。
拭き上げ用のウエスと研磨用歯ブラシがまっ黒になる位の汚れでしたが、お陰で上の写真ようにピッカピカ!ひょっとしてお客さんは”これが自分の722?…”と驚かれるかもしれません。もちろん限界はあるのですが”来た時よりも美しく”お返しできて気分爽快です。
続いてはSV-310EQ(前期タイプ)のアップグレード。入荷時、製品にこんなメモをつけていただいていました。

新品でなく二次取得品でこういったリクエストをいただくことは少なくありません。今回の事例も事前に電話で要望を伺っていましたが、C to Cあるいは中古ショップなどで手に入れて使った結果、”けっこうイイじゃん”となった場合、もっといい状態で使いたいという気持ちになっていただけたのであれば、作った側としては大変名誉なことです。

これが実機(真空管交換後)の内部。履歴不明の個体ですが、恐らく2001年~2004年頃に当方で製作したものと思われます。プリント基板すら起こさず、ユニバーサル基板で電源部を一台一台作っていた頃で、銅テープでシールド性を高めるなど手造り感満載ですね。2002年にネットに参入してから毎年倍々ゲームで出荷数が増えていった訳ですが、2006年頃までは全機種こういう感じのモノづくりをやっていたという訳です。再会出来てとても懐かしい気持ちになると同時に、モノづくりの責任の重さを再認識する想いです。
今回入荷時点の測定では整流管(JAN-CNU 5U4GB)の出力電圧が若干下がっていたのと、左右ゲイン差が0.5dB程度あった他は問題ありませんでした。つまり電気的な故障はない状態ですから逆に言うとハードルは上がったことになります。
PSVANE WE310A, PSVANE WE274B, TESLA E88CCを沢山用意して、その中から特性的, 音色的に最高な状態になるように再選別をするというのは結構たいへんな作業です。特にフォノEQはMC(Low)入力でゲイン約70dBつまり3000倍以上の利得をもっている訳ですから、ほんの少々の差も結果的に大きな特性差につながります。
”球ころがし”ブームでご自身でタマ替えすることが当たり前となっている昨今ですが、知らず知らずのうちに前よりも悪い状態になってしまって結局入院、というパターンも実は少なくありません。今回はせっかくお預かりしたので真空管だけでなく、機構系の再締結, 接点系の洗浄等も含め徹底的にメンテさせていただくことが出来ました。喜んでいただけると嬉しいのですが…。