今日はまず入荷品のチェックから。ちょっと要注目品が…。

これは
Pioneer PE-101A + LE101A。以前ユニットのみの入荷は何度かありましたが、純正エンクロージャー入りは久しぶり。そして新品同様。日本のオーディオの歴史の1ページを飾った名品です。
次にkit LS3/5a SE (= Rogers LS3/5a 65th. Anniversary)のオーバーホール。特におかしいところはないが劣化部分があれば診てほしいというリクエストでお預かりしたもの。


ユニット, ネットワークに異常はなかったものの、日々振動に晒されていたこともあって特にウーハー固定部の締結に緩みが生じている状況でした。同時にネットワーク基板の固定部等すべて増し締めしていきます。

つづいて端子部の研磨。これを所有されているお客さんはSV-19D × 2台で
パッシブバイアンプ駆動されているのでジャンパープレートは付属していませんが、スピーカーターミナル同様プレートも経年変化でメッキが徐々に浮いてきて接触不良が起こるリスクが高まるので、あるタイミングで研磨が必要となります。写真には写っていませんが浮いたメッキ片が飛散する状態でしたので研磨しておいて良かったです。

その他よく見られるのがフェルトの剥がれ。どうしてもこの部分は接着が劣化してくるので適宜再接着しておきます。

これで作業完了。新品同様になりました。
続いてはオーディオテクニカ サウンドバーガーのカートリッジ交換依頼。同様のリクエストがこれで三度目ですので結構”あるある”なのかもしれません。アナログ初心者がカンチレバーを曲げたりスタイラスを飛ばしてしまうのは仕方のないことです。

今回はたまたま持っていたVictor向けOEM品の交換針が使えそうだったので替えてみたらバッチリでした。標準品よりも若干出力電圧が高そうでパワー感も増したようです。

試運転の結果も良好でした。
そして今日の一枚。

クリムトの肖像画をモチーフにしたジャケットが印象的な
2枚組LP。一枚目はアルバン・ベルクのヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」。二枚目がベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲です。
ヴァイオリンはイザベル・ファウスト。楽器は1704年製ストラド「Sleeping Beauty」です。アバド指揮, モーツァルト管弦楽団の鷹揚で柔らかなオーケストレーションとファウストの日本刀のような切れ味のヴァイオリンの対比が秀逸で、神の声のような美しいハイトーンのLP2と悪魔の叫びのような不協和音のLP1の両方を体感できます。

”よい音のLPは聴かずとも分かる”とはよく言ったものですが、この盤もカッティングレベルの強弱が盤面からしっかり分かります。十分に追い込まれたオーディオシステムでは左右スピーカーの中央からファウストの弓がひらひらと動くさまが見えるでしょう。ぜひこのイリュージョンを体感してください。